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生物多様性セミナー 2006年2月

群集動態に関する理論生態学的研究

吉田勝彦(群集動態研究チーム)


 多様性はどのように創出され、維持され、さらに減少するのか、環境撹乱に対して 生態系はどのように反応するのかを明らかにするため、仮想的な生態系モデルを構築 した。このモデルの中では、それぞれの種が固有の性質を持ち、それぞれ自分の好み に合う性質を持つ相手を捕食し、種の漸進的な進化に伴って相互作用も進化する。シ ミュレーションの結果、平均的な実際の食物網によく似た性質を持つ食物網を再現で きた。このモデルを利用したシミュレーションによって、進化的に構築された食物網 は高い復元力を持ち、かなり強い撹乱を加えても多様性変動パターンに大きな変化は 見られなかった。しかし、非常に弱い撹乱でも頻度が高くなると、多様性の低い分類 群の存続に悪影響を与えることが明らかになった。また、陸地から遠く離れた孤島の 生態系のように、外部からの侵入をほとんど受けずに進化した生態系は、特に植物種 の侵入に対して脆弱であり、規模の大きな絶滅を起こす可能性が高いことが示唆され た。例えばオオサンショウウオや肺魚類などの“生きた化石”と呼ばれる分類群の二 つの大きな特徴(形態進化が遅いことと分類群内の種数が少ない状態で細々と生き・ u梠アけること)が捕食―被食関係の進化のプロセスを介して密接に結びついている可 能性が示唆された。その他、環境変動が生物の多様性に与える影響について、いくつ かの興味深い結果が得られたので、それらについて報告する。