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生物多様性セミナー 2005年11月

寄生性ダニからみた生物多様性危機

五箇公一 (侵入生物研究チーム)


 現在、当研究室では環境省地球環境研究総合推進費課題「侵入種リスク評価手法開 発プロジェクト」および農水省農林水産研究高度化事業「マルハナバチリスク管理プ ロジェクト」を推進しており、その一環として、輸入生物に随伴して侵入する寄生生 物の実態調査を進めている。本来、寄生生物と宿主の間には長きに渡る共進化の歴史 を経て、独自の相互関係が築かれている。近年の人為的環境撹乱および生物移送の拡 大がこの宿主-寄生生物の共生関係を破壊し、その結果、共進化プロセスを経ずして 新たな宿主に寄生生物が侵入することで、予期せぬ病害や生態影響を引き起こしてい る。侵入種問題では目に見える愛しい生物種の保全のみが注目を集めるが、目に見え ない(見えにくい)寄生生物の世界においても侵入種による多様性の崩壊が迫ってい る。本講演では、花粉媒介昆虫マルハナバチの商品コロニーやペット用クワガタム シ、爬虫類の移送に伴う寄生性ダニの侵入種問題について実証データを交えながら紹 介するとともに、世界的な重要農業害虫ナミハダニの検疫を巡る情勢と、それを通し てみた我が国の国際流通事情と生物多様性の危機について話題を提供し、議論してみ たい。