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生物多様性セミナー 2005年6月

交尾器形態の多様化を巡る謎:最近の実証研究から

立田 晴記 (化学物質環境リスク研究センター・生態リスク評価研究室)


交尾器は言うまでもなく,生殖活動をつかさどる形質であり,種の多様性を記載す るための有効な道具として用いられてきた.これまでは「錠と鍵仮説」として知られ ているように,配偶時の機械的不和合が生じさせないように選択圧が働くため,同種 内では交尾器形態が長時間にわたり安定して保持されると考えられてきた.しかし最 近の研究から,交尾器は他の形態形質と比べ,比較的柔軟な変化を示すという従来の 見解と異なる実証例が性選択,および発生学的見地から報告されており,他の形態形 質との競合関係も明らかになってきた.本講演では交尾器の変異や発生に関してこれ まで行われてきた研究を幾つか取り上げると共に,大アゴや体サイズに性的2型を示 すクワガタムシの交尾器変異についての解析結果を紹介し,交尾器形態の多様化を生 じさせる要因を考えてみたい.