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生物多様性セミナー 2005年1月

ため池のトンボ成虫・幼虫群集の分布を決める環境要因について

高村典子(多様性機能研究チーム)


2001-2年にかけて兵庫県南西部で35池のトンボ成虫と幼虫の種類組成を一年間 調査し、座標づけ(DCA)を行った。一方、トンボの分布に関係する環境要因 (成虫ではため池周辺の土地被覆や標高などの景観要素と池の植生、幼虫はこれ らに加えて、水質、魚類等、農薬、水落とし)を調べ、トンボ群集の分布を最も よく説明する環境傾度を求めた。ため池のトンボ成虫群集の分布は、第一にトン ボ成虫の森林要求性・化生と移動性、第二に産卵場所選択により成立しているこ とが分かった。これに最も対応する環境要素として選ばれたのは、第一に池周辺 200m程度のスケールの森林や水田の面積、池周辺10m以内の草地面積であった。 第二は抽水植物群落面積と出現する全水生植物の種数であった。第三の傾度とし て市街地面積が選ばれた。幼虫群集の分布傾度は、第一に産卵場所、第二が森林 要求性と相関があった。第二の傾度は、成虫の生息場所選択に影響された傾度と 考えられた。これに対応する環境要素として選ばれたのは、第一に浮葉植物群落 面積と植生のない池の開水面積であったが市街地面積も選ばれた。第二は、成虫 第1軸で選ばれた同じ要素の他に、ブルーギルの数、富栄養化を指標する環境要 素など人為的影響に関する項目も選ばれた。成虫より幼虫群集が人間活動の影響 を大きく受けている。

(付録)その生物群集が天然記念物である深泥池の水質分布に与える人為的影響

2003年11月に京都市深泥池の水質分布特性を調べ、幾つかの人的撹乱要因との関 係について考察した。天然記念物と指定されている生物群集の保全の実態につい て,少し紹介する。