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生物多様性セミナー 2005年1月

ダニに歴史あり〜分子で見たクワガタムシと寄生ダニの共種分化〜

五箇公一(侵入生物研究チーム)


宿主-寄生生物間の共生系は生物学者にとって極めて関心の高い生物学的現象で ある。何より、全く異なる進化プロセスを経てきた別種どうしが出会い、創り上 げてきた歴史的な相互関係に興味が注がれる。こうした宿主-寄生生物間関係の 歴史的結果として宿主と寄生生物が互いに適応しあう現象を共進化といい、宿主 と寄生生物がお互いの系統分化に影響を与えあう現象を共種分化という。現存す る宿主と寄生生物各々の系統関係を比較することで共種分化プロセスが紐解か れ、彼らが歩んできた進化的歴史を垣間見ることができる。我々は、外国産クワ ガタムシの生態リスク評価研究に「便乗」して、文字通りクワガタムシに便乗し て生きているコウチュウダニ科ダニ(通称クワガタナカセ)と宿主クワガタムシ の共種分化関係を分子および形態レベルで追跡することを試みている。クワガタ ムシとそれに寄生するダニについて、同じミトコンドリアDNAチトクロムオキシ ダーゼ遺伝子領域の約2,000塩基配列を調べて系統解析を行った結果、クワガタ ムシとダニの間の想像以上に複雑な共種分化関係が見出された。こうした宿主- 寄生生物間の共種分化現象が「生物多様性の保全」や「外来種問題」というお題 目にどのような示唆を与えるのか、今春施行予定の新法「外来生物法」の動向も 交えて議論をしてみる。