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生物多様性セミナー 2005年4月

遺伝子組換え植物の挙動調査マーカーの開発と組換え遺伝子の導入による 遺伝子発現撹乱について

玉置雅紀(分子生態影響評価研究チーム)


生物多様性プロジェクトのサブテーマとして、 「1,遺伝子組換え植物の挙 動調査用マーカーの開発とこれを用いた導入遺伝子の拡散評価」、 「2,マイ クロアレイを用いた組換え体における遺伝子発現評価」 について行った研究成 果を紹介する。

1, 遺伝子組換え植物の挙動調査用マーカーの開発とこれを用いた導入遺伝 子の拡散評価

 遺伝子組換え植物の挙動を可視的に調べるための遺伝子マーカーを導入した植 物(シロイヌナズナ)を開発した。 これまでに、

  1. ホメオボックス遺伝子の導入により葉の形が変わった植物 (35S::NTH)
  2. アントシアニン類の合成経路を活性化する遺伝子を導入した葉が赤色にな る植物(35S::R)
  3. 改変GFP遺伝子を導入した暗所で発光する植物 (35S::GFP)

を作製した。

これらの遺伝子の導入による宿主植物への生育の影響を調べたところ、GFP遺 伝子を導入しても宿主植物の生育に影響がないことが確かめられた。このことか らこの遺伝子を用いて遺伝子組換え植物の挙動調査を行うことができることが示 された。

そこで、この組換え植物を用いて屋内における自然交雑率を測定したところ、 35S::GFPと野生型植物の交雑は0.24%の確率で起きることが明らかになった。さ らにこの組換え体を用いて交雑率に対する距離の影響を調べたところ、屋内にお ける自然交雑率は植物間の距離の2乗に反比例して減少することが確認された。 また、GFP遺伝子は遺伝子組換え植物の作製の際のマーカーとしても問題なく使 用できるという結果も得た。

2,マイクロアレイを用いた組換え体における遺伝子発現評価

約4,000種類の遺伝子を載せたマイクロアレイを用いてシロイヌナズナの生態 型間及び、非遺伝子組換え体と組換え体との間での遺伝子発現パターンについて 解析を行った。

シロイヌナズナの一つの生態型であるCol-0を基準として生態型間の遺伝子発現 パターンの相関を検証したところ、Col-0同士では相関係数r=0.98、Col-0とWs-2 ではr=0.95、Col-0とCvi-0ではr=0.93という比較的高い相関が見られた。一方、 Col-0と上述したプロジェクトの1で開発を行った遺伝子組換え体35S::NTH及び 35S::GFPとの遺伝子発現の相関係数はそれぞれr=0.92、r=0.87であった。組換え 植物において生態型間でみられる遺伝子発現パターンの相関係数が低くなってい たことから、植物への遺伝子導入により内生の遺伝子発現が撹乱されている可能 性が示唆された。このことを更に検証するために突然変異によりビタミンC合成 能が低下した植物 (vtc1)及び、上記の突然変異の原因となる遺伝子を用いて遺 伝子組換えにより同様にビタミンC合成能が低下した植物(AsGMP)を作製し、こ れらの植物における内生の遺伝子発現パターンについてマイクロアレイを用いて 検証を行った。その結果、Col-0に対する遺伝子発現パターンの相関はvtc1で r=0.95であったのに対して、AsGMPではr=0.85であった。このことから同じ遺伝 子の働きを抑えたる際に、遺伝子組換えを用いる方法は従来の突然変異を用いる 方法よりも内生の遺伝子発現を撹乱することが示唆された。