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生物多様性セミナー 2004年10月

マイクロサテライトマーカーで探る水種子散布植物キシツツジの遺伝構造形成プロセス

近藤俊明(生物圏環境研究領域・熱帯生態系保全研究室)


マイクロサテライトマーカーは高度の多型,共優性等の性質から生物集団内の個体 識別や親子解析に広く用いられてきたが,これらの特徴は集団内の遺伝的多様性, 集団間の遺伝的分化,系統地理等に係わる研究においても有効なものである。 本セミナーでは,中四国及び九州の一部の限定した河川に生育する水種子散布 植物キシツツジを対象に,マイクロサテライトマーカーの持つこれらの特徴を利用し た遺伝分析を行い,種の形成から局所的な分布拡大,そして現在の個体群の維持機構に 至るまでの,異なる空間・時間スケールのイベントを総合的に明らかにすることを目的 とした研究例を報告する。

これまでキシツツジ37集団について遺伝分析を行った結果は,現存するキシツツジ 集団の遺伝構造が,最終氷期終盤の瀬戸内海形成以前に中四国地方に存在した2つの 大河の構造を反映するものであることや,現在の遺伝子流動が河川内に限定され, かつ上流から下流への方向性を持つものであることなどを示し,それらが局所的に 分布するキシツツジ個体群の遺伝構造の形成や種分化に主要な役割を果たしたことが 明らかとなった。