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生物多様性セミナー 2004年3月

日本産鳥類の血液寄生虫感染率と輸入メジロの識別

永田尚志(生物個体群研究チーム)


ペットとして、1990年代には年間8万羽の野外で捕獲されたアジアの鳥類が 輸入されている。その4割強はメジロであり、年間平均およそ3万6千羽のメ ジロが輸入され、1984年〜1996年の13年間におよそ47万羽のメジロが輸入され た。1999年〜2000年にかけて輸入されたメジロの大部分が、中国産および香港 産のヒメメジロであった。輸入メジロの一部は密猟メジロと置き換えられて販 売されたと云われていて、置き換えられた外国産メジロが野外に放逐されたと すれば、原産地から寄生虫を持ち込んだり、国産メジロと交雑を起こしている 可能性が考えられる。日本産メジロへの輸入メジロの潜在的影響を明らかにす るために、メジロを含む日本産鳥類のマラリア感染率、および、メジロの遺伝 的変異を研究した。

PCR法を用いて検査した日本産鳥類17種925個体のうち、Pasmodium属および Haemoproteus属の鳥マラリアに感染していたのは21.7%の個体であった。メジ ロの血液寄生虫の感染率は約45%と、バックグラウンドの平均より有意に高 く、南西諸島や小笠原諸島など南にいくほど感染率が高くなる傾向が認められ た。血液寄生虫のmtDNAのチトクロームb領域のDNA配列から系統樹を作成した ところ、香港マーケットのメジロはHaemoproteus属の血液寄生虫に感染してい た。マラリア原虫(Plasmodium属)の寄生虫は西表島・奄美大島などの南西諸 島で多く確認されている。香港で確認された塩基配列と全くおなじ配列をもつ マラリア原虫(Plasmodium sp.)が西表島でも発見されている。

Haemoproteus属の原虫は、寄主特異性が高いので侵入してもメジロ以外に感 染する危険性は低いと考えられる。マラリア原虫(Plasmodium属)は、寄主特 異性が低いのでマラリア原虫が侵入すると、日本産鳥類に大きな影響を与える 可能性がある。亜熱帯域のメジロでマラリアが検出されたことは、日本産鳥類 がマラリアの罹患歴があり、ある程度の抵抗性を持っている可能性を示してい る。しかし、国外から新たな別種のマラリア原虫が侵入した場合、日本産鳥類 相に大きな影響を与える可能性は否定できない。

また、日本国内に輸入され放逐されたメジロや、国内で捕獲されたメジロの 原産地を特定できるかどうか調べるために、変異性の高いmtDNAのD-loop領域 のDNA配列も調べた。チョウセンメジロ、ヒメメジロ、ハイバラメジロ、マン グローブなどの輸入メジロの塩基配列は日本産亜種と大きく異なっていて識別 可能であることがわかった。これに基づきヒメメジロの交雑個体を識別する遺 伝マーカーを開発した。しかし、日本国内の6亜種間では、特異的配列で識別 できたダイトウメジロ以外の他の5亜種ではD-loopの配列に大きな差異が認め られず亜種を特定することは難しかった。国内産亜種の産地を特定するには、 マイクロサテライトなど、他の部位をマーカーにする必要がある。