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生物多様性セミナー 2004年6月

ダムによる流域分断と淡水魚の多様性(まとめ)

福島路生(多様性機能研究チーム)


ダムによる流域の分断が淡水魚類に及ぼす影響を、北海道日高地方と北海道全 域の2つの空間スケールを対象に、一般化線形回帰モデルによって定量的に評価 した。日高地方では計125の地点において魚類採捕を行い、魚種ごとの生息密度 に対するダムの影響を調べた。北海道全域では、過去40年間の魚類調査をデータ ベース化(文献数約900、調査件数6674、地点数3800)し、淡水魚の種多様度と 種ごとの生息確率に及ぼす影響をみた。日高地方では4種の通し回遊魚(アメマ ス、サクラマス、シマウキゴリ、エゾハナカジカ)の生息密度がダムよって著し く低下していた。このうちはじめの2種(いずれもサケ科魚類)は魚道のないダ ムによってのみ影響を受けていたのに対して、残りの2種は魚道の有無にかかわ らず影響を受けていた。淡水魚の種多様度については標高、流域面積、調査年な どの説明変数に加え、ダムによる分断の有無が有意に影響した。ダムによる種多 様度の低下量は全道平均で12.9%に及び、標高の低い地域ほど低下量が大きく、 河口域の低下量は約9種に達した。河口堰などの淡水魚類への影響が、いかに甚 大であるかが分かる。得られた回帰モデルを元に、全道でダムによる魚類の多様 度低下の現状をGISによって地図化した。また、全43種の淡水魚を個別に調べて みると、26種に対して、その生息確率が何らかの影響を受けており、うち10種は 直接にダムによって生息確率が有意に低下していることが明らかとなった。中で もウキゴリ、ジュズカケハゼ、エゾハナカジカなど、小型の通し回遊魚への影響 が著しかった。既存の魚道はサケマスなど遊泳力のある魚類を対象に設計されて きたため、小型のハゼ科、カジカ科などの魚類に対しては効果が期待できないこ とが推察される。ダムの存在は淡水魚の密度、多様度、種の分布すべてに対して 負の影響を持つことは明らかである。