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生物多様性セミナー 2004年7月

種内競争係数の進化と多様性変動

吉田勝彦(群集動態研究チーム)


Lotka-Volterra方程式で記述された仮想的な生物群集では、種内競争係数が大きいと多くの種が 安定に共存しやすくなることが知られている。しかし、種内競争係数が大きい種は個体数が 増加しにくくなるので、絶滅しやすくなる場合があると考えられる。それでは種内競争係数を 進化させたとき、種内競争係数は大きくなるのか、それとも小さくなるのか?そこで本研究では Lotka-Volterra方程式で記述された仮想的な食物網を進化させるコンピュータシミュレーションを 行い、種内競争係数がどのように変化するのか、その変化に影響を与える要因は何か、 またその時、食物網内での種数がどのように変化するのかを解析した。

この食物網は動物種と植物種によって構成される。植物は外界からのエネルギー流入を 受けて一次生産を行うが、動物は他の種を捕食しなければ生きられないとする。動物種は 自分の好みに合う性質を持つ種を捕食する。動物種はそれぞれ違った“好みの幅”を持ち、 好みの幅が広いほど多くの種類の餌を食べられるが、その分、エネルギー変換効率 (取り入れた生物量のうち、自分の成長に使えるものの割合)が低くなると仮定する。

エネルギー変換効率が低く、外部からの移入がない食物網では、時間の経過とともに 種内競争係数が増加し、食物網内での種数も大きく増加する傾向が見られた (Fig. 1: set01)。エネルギー変換効率を高くして捕食圧を高くすると種内競争係数も 食物網内での種数もあまり増加しなかったが(Fig. 1: set 02)、動物種がすべて 絶滅してしまう場合が増えた。食物網の外部からの種の移入(捕食者となる動物種、 餌となる動物種、植物種の移入)がある場合、種内競争係数も食物網内での種数も あまり増加しなかった(Fig. 1: set 03)。外部からの移入がある場合には、 エネルギー変換効率を上げてもその傾向は変わらなかった(Fig. 1: set 04)。 エネルギー変換効率が低く、外部からの移入がない食物網に一次生産量変動を起こした とき、一部の例外を除いて種内競争係数も食物網内での種数も概ね低く抑えられた (Fig. 1: set 05)。また、この場合、動物種がすべて絶滅する場合が多く見られた。 以上のことから、捕食圧が高い、もしくは環境変動があるような場合では、種内競争係数は あまり大きくならず、群集内での種数もあまり増加しない傾向が見られることがわかった (Fig. 1)。

Fig. 1の説明 動物の種数の最大値と種内競争係数の関係 横軸はそれぞれのシミュレーションにおける食物網内での動物の種数の最大値、縦軸は動物の種数が最大になったときの食物網内における種内競争係数の平均値を表す。