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生物多様性セミナー 2004年1月

遺伝子組換え植物から野生種への遺伝子移行の可能性について

中嶋信美(分子生態影響評価研究チーム)


遺伝子組換え作物は、農水省が作成したガイドラインに則った安全性評価手法、 管理手法で開放系における栽培が認可されている。しかしながら、このガイドラ インは適切に管理された農地で栽培され、適切に処分されることを前提として作 られているため、農地以外の場所(例えば公園や家庭のベランダなど)で十分な 管理が行き届かない状態で栽培されることを想定していない。今後、農作物以外 の植物種にこの技術が適用された場合、これまでのガイドラインの枠内での環境 影響評価手法は不十分になることが予想される。例えば、家庭農園で組換え体を 栽培した場合、組換え体と在来種が交雑して組み換えに用いた遺伝子(以下組換 え遺伝子)が他の種へ移行する事が懸念される。本研究では組換え体から野生種 へ移行した遺伝子がどの程度安定に存在するのかを検討するため以下のような研 究を進めている。 既に栽培が認可された除草剤耐性の遺伝子組換えダイズ(以 下GMダイズ)とダイズの近縁野生種であるツルマメ(Glycin soja)系統の開花期 の調査を行った。その結果、在来のツルマメのうち少なくとも5系統の開花期が GMダイズの開花期と重なった。 次にGMダイズとツルマメを人工交配し、その雑 種子孫に組換え遺伝子が安定に保持されていくのかどうか検討した。 その結 果、雑種第1世代(F1)では、組換え遺伝子が遺伝し、すべて除草剤耐性と なった。更にその子孫(F2)を調べたところ、4分の3の確立で除草剤耐性と なる個体が出現した。また、F2のうち除草剤耐性となった個体の開花期を調べた ところ、10%程度がツルマメとほぼ同じ開花期となった。以上の結果GMダイズ の除草剤耐性遺伝子はツルマメに移行した場合でもメンデル遺伝に従い安定に子 孫へ受け継がれることが明らかとなった。また、雑種の子孫の中にツルマメと開 花期が同じになるものが出現することがわかった。