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生物多様性セミナー 2003年10月

温度による日本産トンボの地理分布推定

辻 宣行(生物個体群研究チーム)


Corbetは、トンボの地理分布を決める要因を、次の3つのレベルで規定している。

  1. ビオトープの選択(ある特定の植物群落、川、池など)
  2. 局所的分布(1.で産卵に適した場所、例えば水辺、ある植物などの分布)
  3. 産卵基質 の分布

我々は、その3段階よりもさらに上位階層に二つのレベルがあるという仮説を立てた。 二つのレベルとは、最上位に、温度、その下に、地理的障害 (海、山など)である。 今回の発表では、最上位の温度(有効積算温量)でトンボの地理分布をどれくらい説明できるか、 広範囲(日本全土)で解析した。

有効積算温量(ある日の平均気温を求め、これから発育0点(10℃)を引いたものの一年間の総計) を、全国の気象データ、緯度と標高より推定し、各40kmメッシュの有効積算温量の上限、 下限を計算した。また、日本のトンボの 40kmメッシュの在・不在データを入手し、 種ごとの有効積算温量の上限、下限を求めた。すると、正解率80%以上の種が全種の内およそ、 75%ほどとなった。日本に生息するトンボの内、およそ75%を温度(第一レベル)で説明できる わけである。推定の間違いには二種類ある:生息すると予測した所に居ない(タイプ1エラー)、 居ないと予測したところに居る(タイプ2エラー)。南から北上した種なのか、 北から南に下りていった種なのかにより、エラーに特徴があることがわかった。 これは、地理的障害を反映していると考えられる。更に、この推定が、各メッシュの環境の 良し悪しの推定にも使えることにも触れたいと思う。