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生物多様性セミナー 2003年6月

ため池の水質とプランクトンを決める要因

高村典子(多様性機能研究チーム)


兵庫県南西部のため池35箇所で、5,7,11月の各季節でため池の水質と動植物プランクトン 群集構成を決める要因について調べた。5月は水生植物が発達する前、7月は水生植物群落が 発達している時期、また11月はほとんどの水生植物が分解した後での水質あるいは プランクトン特性と考えられる。しかし、季節的な差はあまり現れなかった。

1.水質について

水質20項目(消散係数(k),底泥付近の溶存酸素濃度,pH, アルカリ度,TP,PO4-P, TN,NH4-N, NO2-N+NO3-N, Na,K,Mg,Ca,Cl,SO4,Si,Fe,DOC,UV/DOC,Chl.a) を用いて主成分分析を行った。第1主成分は全変動の約40%を説明し、富栄養化を 指標する水質変数が高い固有ベクトル値を示し、池周辺の比較的広域の景観変数と 高い相関を示した。第2主成分は全変動の約15%を説明し、UV/DOC,SiとFeなどの 変数が高い固有ベクトル値を示し、池周辺の狭域の景観変数と高い相関を示した。 第3主成分は全変動の約10%を説明し, pH、SO4,UV/DOCが高い固有ベクトル値を示し、 水生植物群落に関する多くの変数と有意な相関を示した。従って、水質は池周辺の 森林面積や市街地面積により説明される部分が大きかった。

2.植物プランクトン群集

各季節でCCAを行った。いずれの季節も第1軸は全変動の約10%を説明し、池周辺5kmの 森林面積と正の、池周辺5kmの市街地面積、護岸率、pH,TP,TN,K,Ca,SO4及びChl.aと 負の相関を示した.第1軸の正の側にはDinobryon(黄金色藻),PhacusやTrachelomonas (ミドリムシ藻),負の側にはRaphidiopsis,Microcystis,Planktothrix,Anabaena, Lyngbya(シアノバクテリア)が位置した.

3.動物プランクトン群集

同様に各季節でCCAを行った。いずれの季節も第1軸は全変動の約20%を説明し、 池周辺10kmの森林面積(景観変数)、浮葉植物面積の割合と水生植物多様度(植生変数)と 正の相関を示した.一方,池周辺5kmの市街地面積、護岸率(景観変数)、pH,TP、TN, クロロフィルa濃度と負の相関を示した.橈脚類はすべて第1軸の正の側に位置した. 枝角類については、正の方からBosminopsis deitersi,Ceriodaphnia reticulata, Bosmina longirostris,Chydorus sphaericum,Alona spp.,Moina micrura, Diaphanosoma brachyurumの順に並び、後者二種は負の側に位置した.輪虫類のうち, Keratella cochlearis,Conochiloides coenobass,Hexarthra mira,Anuraeopsis fissa などは正の側に, Brachionus budapestinensis,B. forficula,B. calyciflorus, Filinia spp.などが負の側に位置した.

以上より、ため池の水質とプランクトン群集構成はため池周辺の比較的広域の森林面積や 市街地面積により決められているといえる。