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生物多様性セミナー 2002年9月

ため池のトンボ群集を決める環境要素(予報)

高村典子 (多様性機能研究チーム)


兵庫県南西部のため池に出現するトンボ群集が、どのような環境選択を行っているのかを明らかにするため、景観や池の水生植物の植生が異なるため池35ヶ所に出現した45種トンボ成虫センサスデータを用いDCA(Detrended Correspondence Analysis)を行った。

Axis1(寄与率は23.1%)は、トンボの生活史戦略に関する傾度と考えられ、この軸に沿ったトンボ種の並びは、卵期の長短、成虫の出現期間の長短、化生と相関があった。この軸は、面積、日射量、ため池近辺の草地・水田または林の面積、浮葉・沈水植物群落の面積といった環境要素と相関を示した。 Axis2(寄与率は8.5%)は、トンボの産卵特性に関する傾度と考えられた。生殖弁を持ち植物外産卵をし、幼虫が泥の中で生活する種類が一方に、他方に、産卵管を有し植物内産卵をし、幼虫が植物基質に依存した生活をする種類が並んだ。この軸は、主に水生植物の種数、被度、多様度と高い相関を示した。 これらのことは、多様なトンボ群集が、日陰を形成する林だけでなく、日射量の多い皿池や多様な水生植物群落の存在により成立しているといえる。

Axis3(寄与率5.2%)とAxis4(寄与率3.5%)の勾配に沿って並ぶトンボ種の属性は、既存の各種トンボの生活史などのデータからはっきりしたことは言えなかった。しかし、Axis3は、ため池の周囲10mの道路面積、周囲200mから5kmの市街地・住宅地の面積、およびため池のコンクリート護岸長と有意な相関があった。また、Axis4は、ため池の富栄養度を表わす水質項目と有意な相関を示した。このため、市街化や富栄養化といった人為が、ため池のトンボ群集に影響を及ぼしている程度や影響される種類が明確になった。

 これらのデータは兵庫県南西部の現在のため池に出現するトンボ群集と周辺環境の関係を明らかにした。今後、この地域を開発する際、減少するであろうトンボ種や環境回復に、どのような種類のトンボを指標としてモニタリングを実施すればよいかなど、具体的な保全手法に結びつく基礎データが得られたと考える。