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生物多様性セミナー 2002年10月

生息環境分断と均質化の現状把握と影響評価法

福島路生(多様性機能研究チーム)


生物多様性減少の原因として、生息環境の"分断"と"均質化"が多くの生態学者によって指摘されている。演者はこの種の環境改変が近年最も急速に進行している北海道において、その影響が比較的顕著に現れると予想される淡水魚類に注目し、その多様性の現状把握と影響評価法について発表を行った。河川に生息する魚類にとって、生息環境の分断は主にダム等による河川横断工作物によってもたらされる。日高・十勝地方で行った現地調査からは、砂防ダムがつくられることによって上流側の淡水魚類が平均2種減少したという結果が得られた。サケ・マスを始め、海と河川上流とを行き来する回遊魚の多い北海道では、ダムによって彼らが生活史を全う出来なくなり、多くの地域個体群が消滅していったものと考えられる。

一方、淡水魚類にとって生息環境の均質化は河道の直線化によってもたらされてきた。河川は直線化されると瀬淵という魚類生息環境の基本構造を失うが、それと同時に様々な生態学的機能を持つ河畔林も失う。また河床勾配が増加することで流速が増し、一般に河床の構成材料(底質)が粗くなる。このような著しい環境改変は間違いなく魚類の多様性低下もしくは魚類相の変化を引き起こしているはずである。下の図は、大正時代と現在の釧路川本流の河川形状をAngle Measure Technique (Andrle 1994)という手法を用いて比較したものである。この手法は、河川が上流から下流に向かう過程でどれくらい進行方向を変えたか、言い換えれば平均的な河道の曲がり具合(角度)を空間スケールの関数として定量化し、視覚的に表現するものである。この図から分かるように、2つの時代とも約250mのスケールで蛇行の角度が最大であったが、そのピーク値は大正時代の46度に対して現在の34度と大幅に減少し、草地開発や洪水対策による河道の直線化の影響が如実に現れている。