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生物多様性セミナー 2002年11月

生物個体群の遺伝的組成と相互類縁関係−SSR遺伝子マーカーの適用と開発−

高村健二(生物個体群研究チーム)


SSR遺伝子(マイクロサテライト遺伝子)をマーカーに用いて、生物個体群の遺伝的多様度と群間の類縁関係を推定した。絶滅の恐れがある淡水魚イトヨについては、12群について調査した結果、十和田湖の個体群を除いては任意交配が成立していず、個体群の存続に懸念が認められた。類縁関係からは、十和田湖と奥入瀬川の個体群が極めて類縁が近いとわかり、十和田湖の群は移入群であるから、奥入瀬川の群から由来したと類推された。さらに、福井県大野市・福島県会津坂下町・栃木県栗山村の群も一つの系群を形成した。栗山村の群も移入したものであるから、地理的に近い会津地方から来たと類推された。一方で、新規にマーカーを開発して、外来魚の捕食圧にさらされている淡水魚モツゴ個体群の存続可能性を調査することも試みている。リンカーと磁性ビーズを用いた濃縮探索法を採用して開発効率が上がりつつある。

以上の研究発表に対して、個体群の存続にとって危機的な状況を遺伝的多様度で評価するためには明確な基準を提示する必要がある、あるいは、個体生存の上で重要な形質・習性と関係する遺伝子の分析が有用である、との指摘を受けたので、今後の研究方針に加味していく。