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生物多様性セミナー 2002年6月

地域スケールでみたオオヨシキリのヨシ原選択

永田尚志(生物個体群研究チーム)


航空写真や植生図から動物の生息分布を予測できると、過去の分布の推定や将来の変化予測が可能になり、野生生物の保全に役に立つ。今回は、夏鳥として全国のヨシ原に渡来するオオヨシキリの生息分布を航空写真から作成した植生図と地形図をもとに推定した。

オオヨシキリは、放棄水田や湖岸に好適なヨシ原が出現すると、すぐに定着し繁殖を開始するため、分散能力が比較的高く不連続なヨシ原でも連続した個体群を形成できると考えられる。国土地理院の航空写真から判別した霞ヶ浦の周辺1000 km2の地域のヨシ原をGPSに取り込んで実際に踏査して、2001年の繁殖期にオオヨシキリの生息状況を調査した。 すべてのヨシ原(ヨシが生えている植生)にオオヨシキリが生息しているわけではなく、全体の42%のヨシ原に生息していただけであった。

オオヨシキリの生息するヨシ原の選択を、面積、周縁長などのヨシ原の特性、ヨシ原の周囲の土地利用状況、標高、ヨシ原の空間分布など20数項目を変数としたロジスティック回帰モデルを用いて解析し、オオヨシキリの分布に影響を与える要因について考察した。オオヨシキリは、水辺に近い標高の低いヨシ原に生息している確率が高かった。また、1ha以上の大きさのヨシ原からの距離が離れるにつれてオオヨシキリの生息確率は低くなった(図)。

大きなヨシ原からの距離とオオヨシキリの分布確率

その結果、オオヨシキリは、近傍に大きなヨシ原がある標高の低いヨシ原を選んでいて、標高と大きなヨシ原からの距離を変数とするロジスティック回帰モデルで霞ヶ浦周辺のオオヨシキリの70%の分布を予測できた。 このことは、オオヨシキリの個体群が、大きいヨシ原をソース(供給源)ハビタットとするシンク・ソース個体群構造をしているという仮説を支持するだろう。