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生物多様性セミナー 2002年1月

遺伝子組換え体の環境中での挙動調査  - シロイヌナズナにおける挙動調査用マーカーの開発

玉置雅紀(分子生態影響評価研究チーム)


生物多様性プロジェクトの一つのサブテーマとして、組換え遺伝子の拡散を簡便に 見るための新しいマーカー遺伝子の開発を行った。その際用いるマーカーとして、 (1)葉の形態異常を引き起こす遺伝子 (2)体色変化を引き起こす遺伝子、を候 補に挙げ、それらの植物への導入と導入による生育特性の変化を調べた結果を紹介す る。

(1)葉の形態異常を引き起こすホメオボックス遺伝子をマーカーとして用いる

タバコより単離したホメオボックス遺伝子 (NTH15) の導入により、葉の形態異常を 示すシロイヌナズナの組換え系統がいくつか得られた。これらの生育特性を調べた ところ、野生型に対して組換え体で若干の栄養成長の減少が見られたが、種子の 発芽率、開花期に違いは見られなかった。以上の結果から、栄養成長に若干の難は あるものの、この組換え体が挙動調査用の マーカーとして使えることが示唆された。

(2)体色変化を引き起こす遺伝子をマーカーとして用いる

ホメオボックス遺伝子をマーカーとして使用する際の大きな問題点として、生育 特性が野生型と大きく異なることがある。この生育特性の変化が 最終的に環境中への 拡散を調べた時の結果に大きな影響を残す可能性がある。そこ で、 比較的植物の生育に影響の出にくいと考えられる、体色を変化させる遺伝子を導入 した組換え体の作成も行った。クラゲより単離された、GFP(Green Fluorescent Protein)遺伝子をシロイヌナズナで過剰発現した。その結果、暗所で野生型とはっきり と区別することができる組換え体を得ることができた。この植物の生育特性を調べた 結果、種子の発芽率が野生型に比べて20%程度減少していた。その他の特性には違いは 見られなかった。また、導入遺伝子の挙動調査のパイロット実験を行った(結果は 出ていない)。

今後はこの組換え体の生育特性についてさらに検討した後に、挙動調査実験を 繰り返し行う予定である。

また、新しい遺伝子組換え植物の解析手法として、多数の(数千〜数万個)遺伝子の 発現を同時に見ることができるDNAアレイ法(マイクロアレイ)を用いて、ホメオ ボックス導入シロイヌナズナと野生型との遺伝子発現パターンを比較した。その結果、 調べた遺伝子のうち約8.5%程度の遺伝子の発現が変化していた。この結果は、 強いストレス源(オゾン)を植物に与えた時に見られる遺伝子発現変化(約10%) と比べても遜色無いことから、ホメオボックス遺伝子導入により多くの遺伝子発現が 攪乱されていることが示唆された。

今後は、導入する遺伝子の種類によってどのように遺伝子発現が変化するのかを 検討していきたいと考えている。