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生物多様性セミナー 2002年4月

遺伝子地図を組み込んだサクラソウの動態モデルの開発

竹中明夫(群集動態研究チーム)


サクラソウは,湿った草地や明るい林床などに分布する多年生草本である. レッドデータブック(絶滅のおそれがある生物種のリスト)では, 絶滅危惧U類(絶滅の危険が増大している種)に分類されている 園芸用の採集、生育地の植生の遷移、湿地の開発などが減少の 原因とされている.

このサクラソウを材料に,その個体群の動態,染色体上の遺伝子の地図, 花粉を介した個体間の遺伝子のやりとりを調べるとともに,その成果を シミュレーションモデルの形で統合することを目的とする研究プロジェクトが 行われている.開発されたモデルは,サクラソウの適切な保全策の検討に 役立てるとともに,他の種類へも応用可能な枠組みを提示することを意図している.

発表者は,モデルの開発を担当している.このモデルは,サクラソウの一株一株 を区別して取り扱う個体ベースモデルである. サクラソウが種子をつくるためには,昆虫に花粉を運んでもらうことが必須である. この特性をふまえ,空間構造をもったサクラソウ群落のうえを昆虫が飛んで いきながら花粉の授受をおこなうさまを表現する.各個体は遺伝子型の情報を持つ. 種子から生まれる新しい個体は,両親の遺伝子型を組み合わせた新しい型を持つ.

現在のところ,初期バージョンの開発を 終えたところである.今後,これまでに取られたデータ,これから得られるデータに 合わせて,さらに構造の改善と適切なパラメータの値の設定などを行っていく. セミナーでは,モデルのおよその構造を説明するとともに,仮のパラメータ設定 のもとでの計算例を示す.