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知的研究基盤整備:地域適応センターとの気候変動適応に係る共同研究(令和 5年度)
Intellectual research infrastructure development: Joint research on climate change adaptation with local climate change adaptation centers

研究課題コード
2125AX101
開始/終了年度
2021~2025年
キーワード(日本語)
地域気候変動適応センター,共同研究
キーワード(英語)
Local climate change adaptation center,joint research

研究概要

気候変動適応法11条においては、国立環境研究所が情報基盤として、各ステークホルダーへの技術的支援を行うこととなっている。ここでは、地域の気候変動適応に関しての施策に生かすため、地域気候変動適応センターへの技術的援助の一環として、地域センターとの共同研究を知的研究基盤整備として立ち上げ、地域センターの活性化を図るとともにA-PLATへ地域センターを含めた研究活動のデータを集積する。

研究の性格

  • 主たるもの:モニタリング・研究基盤整備
  • 従たるもの:

全体計画

知的研究基盤整備として、地域への技術的支援の一環ならびに、地方・事業者等による適応の促進を図るため、基盤的な観点から地域適応センター等との共同研究活動を進める。例えば、熱中症や自然環境等に関わる地域研究や適応に関する情報に関する研究課題を募集する。それを通して気候変動影響に係る体系的モニタリング、共通の気候シナリオ整備及びそれに基づく影響予測の実施等を行う
 自然環境においては、全国各地の湖沼やグリーンインフラとしての生態系、高山帯や高標高域の各種生態系、海洋生態系を対象として、気象を含む現場観測を長期的に行う方法と共に画像計測による変化抽出方や、生態系応答と変化メカニズムの解明を行うことなど新しいアプローチを取り入れた新たな解析手法も検討していく。また大気環境や熱中症における地域的な気候変動影響を各地の研究機関と共に捉える手法も検討する。
 加えて、科学情報をどのように地域的に伝えることが有効かと言う課題についても、その技術的方法について現場の研究者とともに検討する。

今年度の研究概要

(1)LCCACとの共創による地域の適応に関する情報デザイン
 LCCAC が地域の適応を推進するにあたり必要とする情報や技術についての調査を行い、集めた情報をこれまでに作成した LCCAC の活動に関する事例集や数値データ解析技術についての手引きを拡充する形で LCCAC 等に共有する。また、気候変動適応に関する最新の知見(推進費 S-18、推進費 2G-2201 の成果等)をどのような形で提供すると使いやすいかを LCCAC と議論し、A-PLAT への実装方法について検討する。さらに、気候変動影響や、曝露、脆弱性等に関する GIS データを組み合わせることで、現象の理解や適応行動の促進を図るための情報発信方法について検討する。

(2)気候変動による暑熱・健康等への影響に関する研究
R2〜R5 に取り組んだ実績をベースに観測の実施や搬送者数データの分析、そして影響評価等に取り組む。さらに R6 からの取組として創出された成果の普及啓発を行う。また、前述の研究に限らず新たな研究テーマの創出にも取り組む。これらの成果にもとづき、地域における適応策検討に貢献することを目的とする

(3)気候変動影響検出を目的としたモニタリング体制の構築
我が国は亜熱帯から亜寒帯に属する多様な自然環境を有す。それぞれの自然環境において、たとえば高山植物の衰退、湖沼における結氷頻度の低下と生態系の変化など、地域・地方固有の気候変動影響の観測事例が報告されているほか、ライチョウなど高標高域の限られた領域に孤立した種は生息環境の変化により絶滅が危惧されている。このように各地方では気候変動の影響とされる様々な変化が生じており、モニタリング体制の整備が喫緊の課題である。しかしながら生態系や自然環境のモニタリングは直接踏査による観測が主な方法であり、地環研にとっては多大な労力と時間を要していることに加え、これまで地方独自のツールや方法でモニタリングが行われてきたため、地域間での比較を困難なものとしてきた。よって、自律型かつ簡便・安価な観測手段と統一的な解析手法による広域・多点展開が必要とされている。そこで、本研究では長野県、静岡県と新たに富山県、山梨県を加え、4 県における高山帯や高標高域の湖沼の生態系を対象として、これまで整備した画像観測と気象観測点の継続と新たに観測点を設置することで、気候変動影響を調べる上で最も基本となる気象データを収集するとともに生態系応答と変化メカニズムの解明を第一の目的とする。


(4)既存インフラとグリーンインフラの統合的活用による気候変動適応の検討
 気候変動に伴う水質悪化リスクと暑熱リスクの軽減に向け、グリーンインフラおよび既存インフラとグリーンインフラの複合活用(ハイブリッドインフラ)の有効性を検証する。千葉県の印旛沼流域では、治水のために設置された調整池における水質浄化・生物多様性保全機能の付加の有効性を、野外調査と実証実験により、将来条件下でのリスク軽減の観点から明らかにする。印旛沼は湖沼水質保全特別措置法に基づく指定湖沼であるとともに、流域では水循環基本法に基づく流域水循環健全化計画が設置されている。長野県においては、暑熱リスクに対して、都市域における緑地・グリーンインフラが果たす役割を評価する。

(5)自然湖沼における気候変動影響の観測と評価
猛暑日や集中豪雨といった気候変動に伴い、高水温化や底層の貧酸素化は多くの淡水自然湖沼でも常態化すると考えられている。その影響を少しでも軽減するため、まずは高水温化や貧酸素化の現状把握と在来魚を含む水生生物の減少や水質環境への影響監視が必要である。そこで、7道県の多様な自然湖沼を対象に、水温や底層溶存酸素量を高頻度で観測し、湖水の酸素代謝変数の温度依存性や気象依存性を評価し、短期的な貧酸素化要因を明らかにする。また、高水温化や貧酸素化の影響として、生物・ガス・栄養塩という3つの側面から重層的に評価するためのモニタリング体制の構築を行う。

(6)隠岐島における大気粉塵等の長期気候変動影響検出に関する研究
 東アジア域、日本海域で起こっている気候変動による大気粉塵成分や濃度変動、沈着量への影響などを大気粉塵や成分の長期トレンドから検出・評価する。

(7)沖縄県のサンゴ礁生態系への気候変動・地域環境複合影響を軽減するための赤土流出削減指標策定
 統計解析や現場検証を行うことにより、赤土堆積量等の削減とサンゴ、海藻、底生動物群集の生息量の関係、生物間の相互作用を明らかにし、底生生物群集の存続性を維持するために必要な赤土等流出削減目標や削減効果を明らかにする。

外部との連携

課題(1):長野県環境保全研究所、大阪府立環境農林水産総合研究所、滋賀県琵琶湖環境科学研究センター、大分県衛生環境研究センター
課題(2):香川県環境保健研究センター、川崎市環境局環境総合研究所、静岡県環境衛生科学研究所、福岡県保健環境研究所、神奈川県環境科学センター、栃木県環境森林部地球温暖化対策課・栃木県保健環境センター、(地独)大阪府立環境農林水産総合研究所、愛媛県立衛生環境研究所、高知県衛生環境研究所
課題(3):長野県環境保全研究所、静岡県環境衛生科学研究所、富山県環境科学センター、山梨県富士山科学研究所
課題(4):千葉県環境研究センター、信州気候変動適応センター
課題(5):北海道立総合研究機構、秋田県健康環境センター、福島県環境創造センター、茨城県霞ケ浦環境科学センター、栃木県保健環境センター、滋賀県琵琶湖環境科学研究センター、鹿児島県環境保健センター
課題(6):島根県保健環境科学研究所
課題 (7):沖縄県衛生環境研究所

備考

課題(7)は2022年度開始

課題代表者

西廣 淳

  • 気候変動適応センター
  • 副センター長
  • 博士(理学)
  • 理学 ,生物学
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担当者