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森林生態系における新たな生物・環境モニタリング手法の検討(令和 5年度)
Development of New Biological and Environmental Monitoring Methods in Forest Ecosystems

研究課題コード
2224AH006
開始/終了年度
2022~2024年
キーワード(日本語)
大気汚染,気候変動,森林生態系,モニタリング
キーワード(英語)
Air Pollution,Climate Change,Forest Ecosystem,Monitoring

研究概要

以前から、各地の森林においてブナやダケカンバなどの樹木の衰退現象が報告され、その要因の一つとして長距離移流によるオゾンなど大気汚染物質の影響も指摘されている。一方、シカなど野生生物の生息域拡大に伴う林床等植生の破壊や気温上昇などによる土壌乾燥化の進行も森林生態系・生物多様性への影響が懸念されている。また、最近は気候の変動により発生する大規模な自然災害による生態系撹乱の頻度が高まると予想され、これが森林の健全な更新と気候緩和や防災等に関する機能の維持に影響を与える可能性がある。このような状況のなか、森林生態系の衰退/健全度を的確に評価し、その変化の兆候を早期に発見・把握し、迅速に対処するためには、長期的・多面的に継続したモニタリングの実施と因果関係の把握が極めて重要と考えられる。一方、気象や大気質についての観測は主に都市近郊で行われており、山地に分布する国内の森林生態系における観測データは不足している。このことが森林生態系の衰退・劣化現象の解明とその将来予測の妨げとなっている。
先行研究では、ブナ等の森林生態系において、その健全性を脅かすと考えられる要因(オゾン、土壌乾燥化、シカ食害、虫害等)について、生態学的、環境科学的視点から、統合的に評価するための長期継続可能なモニタリング手法を開発し、継続実施してきた。
本研究では、?開発したモニタリング手法の普遍化を図ると共に、これまで実施してきたモニタリングの問題点等を把握し、?森林生態系の現況の把握と保全対策を進めるために新たな観測技術を導入したモニタリング手法を検討し、標準調査マニュアルの整備を通して技術的知見の共有をすすめ、?これらを活用して、全国の自治体での観測調査ネットワークの展開を推進することを目標とする。
 なお、現在環境省では、「大気モニタリングデータ解析・生態系影響評価ワーキンググループ」が設置され、生態系影響のモニタリングについても検討が進められている。また、森林の持つ多面的な機能は人間に多くの福利(生態系サービス)を提供しており、国の研究機関と地方公共団体が連携して、気候変動を含めた複合的な要因による森林機能への影響を把握することは、「気候変動適応法」および「気候変動適応計画」においても重要な取り組みとなる。今後、本研究による具体的な生物・環境モニタリングの成果・情報を積極的に発信し、協働して新たな森林生態系モニタリング手法を検討・導入し、ネットワークの構築を推進する。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:モニタリング・研究基盤整備

全体計画

以下のサブ課題について、実施する。
(1) ネットワーク構築:地方自治体など関係機関のさらなるネットワーク化を推進。また、国環研において実施される気候変動適応にかかる陸域生態系の観測研究との連携を検討。
(2-1) 標準植生調査:これまで実施してきたブナ林などの森林生態系における長期継続モニタリングの植生関係調査(毎木、衰退度、林床植生、着生植物等)および樹木の生物季節(フェノロジー)や生理活性調査(クロロフィル、水分状態等)等の定点調査の実施。
(2-2) 新規植生調査:ドローンや自動カメラなど可視化可能な観測手法の開発および得られたデータの解析・検討。
(2-3) 動物等調査:シカ等の動物や昆虫類に係る調査の実施。
(3-1) 標準大気調査:パッシブサンプラーによるオゾン、二酸化窒素等大気質の状況の集積と技術的な改良・検証。
(3-2) 新規大気調査:バッテリーなど省電力の条件下で稼働する時間分解能の高い観測装置の開発・導入・検証。
(3-3) 気象・土壌環境調査:一部の調査地での大気温湿度、土壌温度・水分含量等の測定と電力のない調査地で展開可能な観測手法の検討。

今年度の研究概要

昨年度、参加した研究機関の調査候補地(兵庫県・能勢妙見山および愛媛県・石鎚山)において、調査対象とする樹木個体を選定するとともに、パッシブサンプラーによる大気汚染調査を開始する。
従来より調査を継続している調査地において適切な調査の継続とデータの品質管理を目的とした技術的知見の共有をはかる。気候変動などによるフェノロジー(植物季節)の影響を詳細に数値化し記録するために、調査地への自動カメラの設置を進める。

外部との連携

国立環境研究所、秋田県林業研究研修センター、新潟県保健環境科学研究所、長野県環境保全研究所、静岡県環境衛生科学研究所、福岡県保健環境研究所、(公財)ひょうご環境創造協会兵庫県環境研究センター、愛媛県立衛生環境研究所

関連する研究課題

課題代表者

高橋 善幸

  • 地球システム領域
    陸域モニタリング推進室
  • 室長(研究)
  • 理学博士
  • 化学,地学,生物学
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