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精密水銀同位体分析による植物の水銀循環機構の解明(令和 5年度)
Understandings of the mechanism of mercury cycling in plants by Hg isotope analysis

研究課題コード
2325CD001
開始/終了年度
2023~2025年
キーワード(日本語)
大気水銀,水銀,水銀同位体,MC-ICP-MS
キーワード(英語)
atmpspheric mercury,mercury,Hg isotope,MC-ICP-MS

研究概要

水銀は化学形態を変化させながら汚染域を全球的に拡大する有害金属である。2017年に発行された「水銀に関する水俣条約」では、水銀が人や環境に与えるリスクを低減するために国際的な管理の強化が進められており、環境物質の継続的な監視によって汚染対策の有効性の評価が実施されている。既に排出された水銀については、気候変動や土地利用の変化によって生じる地球規模の水銀循環への影響に関する将来予測が重要視されているが、水銀の化学的挙動が複雑であるが故に評価が遅れている。そこで本研究は、大気中水銀の主要吸収源であり、環境変化に敏感である植物について、吸収や再放出に対する応答性を定量や同位体分析を用いて理解し、植生に由来する水銀の環境動態について新たな知見を得ることを目的とする。

研究の性格

  • 主たるもの:基礎科学研究
  • 従たるもの:応用科学研究

全体計画

本研究では、大気中水銀の植物への吸収・再放出プロセスを理解するために、植物およびその周辺の環境媒体の総水銀および水銀同位体分析を実施する。
<2023年度以降の計画>
I. 試料採取・分析に関する検討
・降水試料の捕集方法の検討
・精密水銀同位体分析のための前処理法の評価
・標準物質の作製
<2024年度以降の計画>
II. 植物の大気中水銀の吸収・再放出についての化学的プロセスの解明
・採取場所の選定
・葉のHg0(g)吸収についての調査
・葉からのHg0(g)再放出についての調査
・研究の発展を目指し、上記二つの調査を環境の異なる地点(発生源・バックグラウンド域)で調査を実施し、環境変化によるプロセスの優位性を調べる
III. まとめ:定量および同位体分析の結果に基づき、植物種や周辺環境(気温・湿度・日照時間、周辺の発生源の有無など)の違いによる葉の蓄積量、Hg0(g)の再放出の強度差を解析し、先行研究と合わせて議論する。成果は毎年度国内外の会合で報告し、関連する研究者と意見交換する。最終年度の後半は成果発表期間と位置付け、論文の執筆を行う。

今年度の研究概要

I. 試料採取・分析に関する検討
・環境試料の捕集方法の検討:降水試料の採取および前処理方法について先行研究を参考にし、システムを構築する。
・精密水銀同位体分析のための前処理法の評価:葉の水銀同位体分析の前処理では、二段階加熱炉を用いる。手始めに加熱温度や保持時間、水銀吸収液の調整等の最適な条件を検討する。既存の標準試料に加えて、本研究で作製した標準試料を用いて、回収率の確認および前処理による同位体分別の有無を確認することで制度管理を行う。
・標準物質の作製:水銀の同位体比変動は微小で、信頼性の高い分析結果を得るためには、高感度・高精度な分析手法の開発および精度管理が必須である。一般的には、測定試料と主要化学組成が類似した標準物質を用いて分析の正確さを評価するが、植物の同位体分析で使用されている標準物質について、ラボ間で微小な差がある。そこで本研究では、分析精度管理用のin-houseの組成標準を作製する。国内の葉を入手し、乾燥・粉砕・均質化・瓶詰め・滅菌を行い、加熱気化原子吸光水銀測定装置(日本インスツルメンツ社製、MA-3000)で総水銀濃度、マルチコレクター誘導結合プラズマ質量分析計(Nu instruments社製、Nu Plasma II)で水銀同位体比を得て、参考値を付与する。

関連する研究課題
  • : 基盤計測研究(ア先見的・先端的な基礎研究)

課題代表者

山川 茜

  • 環境リスク・健康領域
    環境標準研究室
  • 主任研究員
  • 理学博士
  • 地学
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