- 予算区分
- CD 文科-科研費
- 研究課題コード
- 1719CD014
- 開始/終了年度
- 2017~2019年
- キーワード(日本語)
- miRNA,精子,多世代影響,ヒ素
- キーワード(英語)
- miRNA, sperm, multigenerational effects, arsenic
研究概要
申請者らはこれまでに、無機ヒ素を妊娠中のC3Hマウス(F0)に飲水投与すると、孫世代(F2)で肝腫瘍が増加すること、その原因は胎児期曝露を受けたF1雄にあることを明らかにした。最近精子のごく少量のsmall RNAが受精卵の遺伝子発現や発生に影響を及ぼすことが相次いで報告されている。そこで本研究では、胎児期無機ヒ素曝露を受けたF1精子で存在量が変化するsmall RNAについて、特にmiRNAに着目して解析し、そのsmall RNAの変化が受精卵の機能に影響するという証拠を示すことによって、無機ヒ素曝露が精子を介して次の世代に影響を伝える新規分子メカニズムを解明する。
研究の性格
- 主たるもの:基礎科学研究
- 従たるもの:
全体計画
成熟後の精子はribosomal RNA(rRNA)をほとんど含まず、大部分はsmall RNAであり、1精子中のRNA量は数〜数十fg程度と微量であることが特徴である。本研究では、マウス精子RNAを至適調製条件で調製し、胎児期ヒ素曝露を受けたF1精子で存在量が大きく変化するsmall RNAを、特にmiRNAに着目して解析し、そのsmall RNAが受精卵で機能することの証拠を示す。以上より、無機ヒ素曝露の影響が精子を介して次の世代に伝わる新規分子メカニズムの一端を解明する。さらにその影響が、次のF2まで伝わるか否かについても、small RNAの変化を指標として検討を加える。
今年度の研究概要
1)F1精子の再調製とmiRNA解析: 対照群と妊娠期ヒ素曝露群(ヒ素群)のF1より精子を調製し全RNA画分を精製する。マイクロアレイ法でmiRNAの網羅的解析を行い、ヒ素群で存在量が変化するmiRNAを明らかにする。マイクロアレイ法で得られた結果をReal-time PCRで検証する。またヒ素群F1の精子で変動したmiRNAのターゲットとなる遺伝子発現をmiRanda, TragetScan等のアプリケーションを用いて抽出し、影響を及ぼしうる経路を予測する。
2)F1精子small RNA-seq用RNAの調製とライブラリーの作製とsmall RNA-seq:環境研で対照群およびヒ素群F1精子全RNAよりsmall RNAの5’および3’末端へのアダプター付加、逆転写、増幅によってsmall RNA-seq用ライブラリーを調製する。成育医療研究センターで次世代シークエンスを行い、初年度に構築したデータ解析パイプラインでtRF等のsmall RNAの定量的解析を実施する。
3)受精卵へのmiRNAの導入および遺伝子発現解析の条件検討: 体外受精によって作成した受精卵に核酸をマイクロインジェクションし、一定時間培養後にmRNAの発現変化を測定するための至適条件を検討する。
外部との連携
共同研究者:国立成育医療研究センター 秦健一郎、中林一彦