- 予算区分
- CD 文科-科研費
- 研究課題コード
- 1416CD004
- 開始/終了年度
- 2014~2016年
- キーワード(日本語)
- 無機ヒ素,妊娠期曝露,継世代影響,エピジェネティクス
- キーワード(英語)
- inorganic arsenic, gestational exposure, transgenerational effect, epigenetics
研究概要
C3Hマウスは雄が成長後に肝腫瘍を発症しやすい系統で、その腫瘍組織では体細胞突然変異によって活性化した癌遺伝子Ha-rasが一定の割合でみつかる。申請者らは最近の研究によって、妊娠中のC3H母マウスに一過的に無機ヒ素を含む水を飲ませると孫世代(F2)の成長後に肝腫瘍が有意に増加するという現象を発見した。この現象は仔(F1)の生殖細胞が胎児期にヒ素曝露を受けた結果と考えられる。環境化学物質の妊娠期曝露の世代を越えた健康影響の理解が今後重要となるが、その理解に必要な機序はほとんど明らかにされていない。本研究では、「妊娠期ヒ素曝露によって孫の肝臓に伝わったエピジェネティック変化(エピ変異)が、突然変異誘導能を高め、癌を増やす」という仮説を設定し、原因となるエピ変異を探索し、未知の機序の解明をめざす。
研究の性格
- 主たるもの:基礎科学研究
- 従たるもの:技術開発・評価
全体計画
C3Hマウスは雄が成長後に肝癌を発症しやすい系統で、その肝癌組織では体細胞突然変異によって活性化した癌遺伝子Ha-rasが一定の割合でみつかる。申請者らは最近の研究によって、妊娠中のC3H母マウスに一過的に無機ヒ素を含む水を飲ませると孫世代(F2)の成長後に肝癌が有意に増加するという現象を発見した。この現象は仔(F1)の生殖細胞が胎児期にヒ素曝露を受けた結果と考えられる。環境化学物質の妊娠期曝露の世代を越えた健康影響の理解が今後重要となるが、その理解に必要な機序はほとんど明らかにされていない。本研究では、「妊娠期ヒ素曝露によって孫の肝臓に伝わったエピジェネティック変化(エピ変異)が、Ha-ras等の変異誘導能を高め、癌を増やす」という仮説を設定し、原因となるエピ変異を探索し、未知の機序の解明をめざす。
今年度の研究概要
1)妊娠期ヒ素曝露群F2肝臓のDNAメチル化変化: 妊娠期ヒ素曝露群F2の正常肝組織および腫瘍組織で、対照群と比較してTSS近傍等でDNAメチル化が変化し、それに対応した遺伝子発現変化がみられる領域(DMR)を明らかにする。遺伝子発現変化とDMRのメチル化変化との対応をマウス肝がん細胞株の5aza-dC処理等により検討し、遺伝子発現変化と対応するDMRについては体細胞突然変異の増加や肝腫瘍増加との関係について、文献検索や細胞株での実験で検討する。
2)妊娠期ヒ素曝露群F2肝臓のmiRNA解析: G6apcの減少が肝がんの発症に関係しているという報告を鑑み、G6apcがmiR-29aのターゲットである可能性を検証する。方法としては以下の2つを用いる。1) 肝臓の培養細胞にmiR-29を導入し、G6apcの発現を定量する。2) G6apcの3'UTRをレポーターにつなげたplasmidとmiR-29を細胞に導入してレポーター活性に影響するかを検討する。
以上の研究によって、ヒ素曝露群F2肝臓の体細胞突然変異や肝腫瘍増加の関与するDNAメチル化やmiRNAを明らかにする。
外部との連携
研究分担者: 国立成育医療研究センター、秦健一郎、中林一彦; 群馬大学、畑田出穂