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絶滅危惧淡水魚イトウ(サケ科)の新たなモニタリング手法の開発(平成 24年度)
A novel monitoring technique for the endangered Sakhalin taimen (Salmonidae)

予算区分
NA 寄付
研究課題コード
1213NA002
開始/終了年度
2012~2013年
キーワード(日本語)
イトウ,モニタリング,音響ビデオカメラ
キーワード(英語)
Sakhalin taimen, monitoring, acoustic video camera

研究概要

本研究は絶滅危惧淡水魚イトウ(Parahucho perryi)が比較的数多く生息する北海道北部の河川において,2013年春,本種の産卵期に現地調査を行い,以下3つの目的を達成するものである。産卵のために遡上する親魚を,最下流に設置する高分解能音響ビデオカメラ(DIDSON)により3週間ほど連続して記録し,過去の産卵親魚の個体数推定値と比較し,生息数の推移を調べる(目的1)。またDIDSONに加え,最上流の産卵場にも定点カメラを多数設置し,遡上してくるイトウを撮影することで,産卵場の空間分布を把握し,同時に遡上に要する時間やタイミングを支流ごとに記録する。これによりイトウの産卵分布を規定する要因(遡上障害となるカルバートや堰など)を特定する。またイトウに対する脅威でもある遊魚(釣り)の自粛時期を科学的根拠に基づいて提案する(目的2)。本研究は,遠隔かつ非破壊にて生物の行動を観測するリモートセンシングの一種である。これまで例のない淡水魚類への航空機リモセンの応用なども視野に入れ,研究の発展性を検証する(目的3)。

研究の性格

  • 主たるもの:技術開発・評価
  • 従たるもの:モニタリング・研究基盤整備

全体計画

イトウは北海道と極東ロシアに生息する大型のサケ科魚類,また日本最大の淡水魚である。イトウは日本在来のサケ科魚類では唯一春に産卵する。本種の生息域と生息数は近年著しく縮小また減少し,国際自然保護連合(IUCN)は絶滅危惧種(CR),また環境省も絶滅危惧IB類に指定している。本研究はイトウが比較的数多く生息する北海道北部の河川※1において,本種の産卵期に現地調査を行い,以下3つの目的を達成するものである。
目的1)調査河川における個体群サイズの推定
目的2)産卵回遊の解明と保全策の提言
目的3)淡水魚全般へのリモセン応用可能性の検証
本種は生息河川によってサケのように海にまで広く回遊する,あるいは淡水域のみで生活史を完結することが知られており,回遊に関する地域性(主に緯度に依存する)が知られている。しかしそれ以上の知見は乏しく,本種の保全に関する具体策を講じる上で,その回遊生態の解明が急がれている。
2013年春,産卵のために下流(汽水域)から遡上する親魚を,最下流に設置する高分解能音響ビデオカメラ(DIDSON)により3週間ほど連続して記録し,過去(1991, 1998, 2001)の産卵親魚の個体数推定値と比較し,生息数の推移を調べる(目的1)。またDIDSONに加え,最上流の産卵場にも定点カメラを多数設置し,遡上してくるイトウを撮影することで,産卵場の空間分布を把握し,同時に遡上に要する時間やタイミングを支流ごとに記録する。これによりイトウの産卵分布を規定する要因(遡上障害となるカルバート※2や堰など)を特定する。またイトウに対する脅威でもある遊魚(釣り)の自粛時期を科学的根拠に基づいて提案する(目的2)。本研究は,遠隔かつ非破壊にて生物の行動を観測するリモートセンシングの一種である。これまで例のない淡水魚類への航空機リモセンの応用なども視野に入れ,研究の発展性を検証する(目的3)。
本研究は,米国オレゴン州のNGO, Wild Salmon Centerに所属し,IUCNサケ科専門家グループ議長を務めるDr. Peter S. Rand氏の日本学術振興会(JSPS)による平成24年度外国人招へい研究の関連研究である。氏は来年3月下旬より本助成金により来日し,国立環境研究所で申請者と共同研究を予定している。調査河川のある地元にはイトウ保護を積極的に行う有志団体があり,2005年ころより当団体の協力のもと,国環研とWild Salmon Centerは現地でイトウの生態調査を行ってきた。

今年度の研究概要

【現地調査の手順】
DIDSONはカーバッテリー(電源)とデータ保存のためのノートPCとともに調査河川下流に1台設置する(4月下旬から5月上旬;設置には東陽テクニカの技術者が同行)。バッテリー交換・データ回収のために本器は毎日点検する。数秒間隔で自動撮影する定点カメラは20-30kmほど上流に位置する複数の産卵河川(川幅2-3メートル,水深30cm程度)にあらかじめ設置する(20カ所程度)。産卵期のオスのイトウは頭部を除いて全身が紅色の婚姻色に染まるため,河岸からも肉眼で容易に観察できる。そのため定点カメラは水中ではなく河岸に設置し,遡上するイトウ(多くは体長60cmを超える)を一定時間間隔で自動撮影し検出する。水温ロガーを3カ所程度に設置し,産卵期を通じての水温変化を記録する。橋脚に設置された水位計から水位を読み取る。

【測定・記録項目】
(1)産卵遡上のタイミングと継続日数(DIDSON)
(2)親魚の遡上数(DIDSON)
(3)親魚の産卵場への到達時間(DIDSON,定点カメラ)
(4)産卵場の空間分布(定点カメラ,現地踏査・GPSによる産卵床記録)
(5)カルバート等の分布(現地踏査,GPS)
(6)産卵後下流に降河する親魚の数とタイミング(DIDSON)
(7)産卵期を通じての水温および水位変動(データロガー,水位計)

【データ解析】
次の事項を解析また評価する。
1)過去の親魚数(産卵床データ)との比較による長期的な生息数の推移
2)イトウの産卵回遊に関する時空間パターン
3)水温・水位変動と産卵行動との関係
4)カルバートの産卵分布と産卵時期への影響
(産卵後に下流に降河するイトウをDIDSONで再検出できるかどうかは,調査期間とイトウ産卵期間との関係から不確実。)

【イトウ保全に向けての展望】
河川源流から河口域,さらに沿岸域まできわめて広範な生息域を持つイトウの保全にとって,どの季節・タイミングに河川流域のどこを本種が利用するかを正確に把握することは重要である。本研究結果からイトウの回遊の障害物(カルバートや堰)を見つけ出し,その管理者や土地所有者に対しその改修,場合によっては撤去も視野に入れた提言を行う。本研究は音響ビデオカメラと定点カメラを併用する水中また陸上からの撮影であるが,より広域的なモニタリングに向けて,ラジコンヘリやセスナ機等によるイトウの空中撮影も将来展望のひとつである。

外部との連携

研究分担者:Wild Salmon Center 主任研究員 Rand, Peter S.
研究分担者:東京大学 海中工学国際研究センター教授 浅田 昭
研究分担者:東京大学 海中工学国際研究センター特任助教 水野勝紀
研究分担者:環境計測研究センター・環境情報解析研究室 小熊宏之
研究分担者:北海道大学 創成研究機構 特任助教 小泉逸郎

関連する研究課題

課題代表者

福島 路生

  • 生物・生態系環境研究センター
    生態系機能評価研究室
  • 主任研究員
  • 水産学博士
  • 水産学,農学,生物学
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