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本プログラムは、国立環境研究所の5つの課題解決型研究プログラムのひとつで、生物・生態系環境研究センターが中心となって進めています。  

  • 生物多様性の保全とそれに資する科学的知見の充実に向けた研究・技術開発
  • 森・里・川・海のつながりの保全・再生と、生態系サービスの持続的な利用に向けた研究・技術開発
     

に取り組み、生態系からの恵みを将来にわたり享受し利用できる自然共生社会の実現に貢献することを目的としています。
本プログラムは、5つの研究プロジェクトが柱となっています。




プロジェクト1:人間活動と生物多様性・生態系の相互作用に基づく保全戦略に関する研究

生物多様性・生態系の適切な利用・管理のための方策を提案します




日本は自然資源の消費国として、貿易・流通を通じて資源産出地域の生物多様性に広範囲で影響を与えています。一方で、国内では人口の一極集中・減少を背景に、森林や農地などでの適切な管理の喪失による生物多様性の減少、生態系の荒廃が問題となっています。

本プロジェクトでは、異なるスケール(例えば、国内外)で生じる生物多様性・生態系の利用と管理の問題を統合的にとらえ、戦略的な解決策を提案するための基盤となる評価指標の開発を行います。

具体的には、国際貿易を通じた生物多様性フットプリント(*)の定量化を目的としたサブテーマ1、国内における人口減少下での生態系・生物多様性の応答の定量化と、それに基づく管理戦略の構築を目的としたサブテーマ2から構成されています。
(*)生物多様性フットプリント:単位資源消費に対する生物多様性影響量 

  • サブテーマ1 資源利用による生物多様性への影響の定量化

資源利用がサプライチェーンを通じて資源算出地域の土地利用をどのように改変するかを資源循環・廃棄物研究センターとの連携により定量化します。
さらに、土地利用の変化が生物多様性に与える影響を定量化するための指標を開発します。

  • サブテーマ2 人口減少下での生態系管理戦略の構築

人口減少にともなう土地利用変化(耕作放棄など)に対する生態系・生物多様性の応答を評価するためのデータ収集とモデル化を行い、生態系の変化が人間社会に与える影響を 明らかにします。これらにより、人口減少下での生態系・生物多様性の応答を評価・予測します。



プロジェクト2:生物多様性に対する人為的環境撹乱要因の影響と管理戦略に関する研究

生物多様性への脅威への対策を速やかに講じます




COP10で採択されたポスト2010年目標(愛知ターゲット)においては、戦略目標Bとして、「生物多様性への直接的な圧力を減少させ、持続可能な利用を促進する」ことが目標として掲げられており、人為的な環境かく乱による生物多様性の減少を食い止め、持続的な管理システムを構築することが国家戦略として急務となっています。特に国内においては、侵略的外来生物の増大や、ネオニコチノイド農薬に代表される汚染物質がもたらす生態系かく乱が差し迫って重要な対策課題とされ、また、国民の関心も高まっています。

本プロジェクトでは、これらの課題に対する具体的かつ効果的な管理手法を開発し、環境省の外来生物・農薬リスク管理政策に貢献します。さらに、外来生物も含む野生生物の分布異変がもたらす野生生物由来の感染症病原体にもフォーカスして、その生態リスクを明らかにし、生物多様性および健全な人間社会を維持するための管理手法開発を目指します。 

  • サブテーマ1 侵略的外来生物の生態影響評価および防除手法開発

・外来生物が侵入・定着・分布拡大するうえでの生態学的・社会学的要因を解明します。
・外来生物の検疫手法・早期発見手法・防除手法を開発してマニュアル化します。
・外来種管理の普及啓発を行うとともに、地域主体・市民恊働型防除システムを構築して、社会実装を進めます。

  • サブテーマ2 農薬による生態影響評価およびリスク管理手法の開発

・ネオニコチノイド系農薬をはじめとする化学農薬の生態影響評価手法を開発します。
・野生生物における農薬の影響実態を把握します。
・農薬による生態リスク低減のための管理手法を開発します(ローテーション、耕作手法検討)。
・農薬取締法における農薬生態影響評価システムの高度化を図ります。

  • サブテーマ3 野生生物由来の新興感染症管理対策

・鳥インフルエンザ、マダニ媒介感染症など野生動物由来感染症Zoonosisの侵入・分布拡大実態の解明および分布拡大にかかる生態学的・社会学的・経済学的要因を分析します。
・カエルツボカビ・アカリンダニなど生物移送にかかる感染症拡大プロセスの解明および管理対策手法を開発します。
・感染症等による野生生物死亡事例の情報ネットワーク構築およびデータベース化を行います。
・Host-Parasite共進化・共種分化分析に基づく病原体微生物における多様性・固有性保全の生態学的意義を追求します。



プロジェクト3:広域環境変化に対する生物・生態系応答機構解明と適応戦略に関する研究

広域環境変動に対する生物・生態系応答を予測し、適応戦略指針案を作成します



本プロジェクトは、広域環境変動の中でも緊急性の高い「気候変動」と「大気汚染」に対する生物・生態系の応答機構を、検証データに基づいて明らかにし、今後起こると想定される環境変動シナリオに対する生物・生態系の応答解析を行います。この成果を基に、@気候変動緩和・適応策、A生物多様性を考慮した生態系保護区選定戦略の指針作成に科学的根拠を与えることを目的としています。

本プロジェクトは以下の3つを柱として進めます。 

  • サブテーマ1:環境変動に対する生物応答 「環境変動で、何が、どの様に応答するか?」

温室効果ガスによる気温上昇や、大気汚染による光化学オキシダントが生物・生態系に及ぼす影響は甚大であると懸念されていますが、これに対して実装可能な適応戦略を示せるに至っていません。
一方で、ある特定の生物や生態系の機能が温度変動や大気汚染物質暴露によってどのような応答を示すか?といったデータは、多くの研究者による検証の長年の成果が科学論文や報告書といった形で世界中に散在しています。本サブテーマでは、これらの既存データを集約し、適応戦略に生かせる形式に整理します。

  • サブテーマ2:環境応答機構解明 「環境応答は、なぜ、どのように起きているか?」

複雑に関連し合う事象の詳細機構を明らかにすることで、生物・生態系を考慮した適応戦略を構築することが可能となります。本サブテーマでは、広域環境変動の中でも特に緊急性が高いとされている「気候変動」と「大気汚染」が植物の生理機能へ及ぼす複合影響について、その詳細機構を明らかにします。

  • サブテーマ3:広域環境変動影響評価 「どのような適応戦略が適切か?」

環境変動によって生物の生理機能が影響を受けると、分布や生態・フェノロジーが変化することが予測されます。適応戦略は詳細から広域スケールにわたる影響を考慮しながら構築する必要があります。また、地域ごとの社会システムや経済動向を加味することも重要です。本サブテーマでは、今後予測される気候変動と大気汚染のシナリオに基づいて、生物応答解析(サブテーマ1・2で得られる情報を活用)を行います。



プロジェクト4:生物多様性の統合評価および保全ツール開発

蓄積された情報と開発したツールを社会に提供します



生物多様性の保全・生態系サービスの供給維持を効率的に実現するためには、生物多様性に対する複数の脅威要因の影響と、その対策のコストを統合評価し、広域スケールで保全策の優先順位を付けることが必要となります。
本プロジェクトでは、自然共生社会研究プログラムの他プロジェクトの成果を含め、生物多様性の保全・生態系サービスの持続可能な利用に必要な技術・知見を蓄積します。また、生物多様性・生態系サービスに関連する基盤情報の整備・データベース化を行います。こうした情報をベースに、生物多様性・生態系サービスの多面的な評価指標を考慮した保全エフォートの配置デザインを援助するツールを開発します。さらに、蓄積された情報と開発したツールを、政府機関・地方自治体・NGOなどを通じて社会に提供します。 

  • 生物多様性・生態系サービスに関連する基盤情報として、生物の分布情報・生態特性・土地利用等のデータの整備・データベース化を行います。
  • 適切な統合評価を行うため、生物多様性・生態系サービスの評価指標を整理します。
  • 多面的な評価指標と保全対策の効果・コストを考慮した、保全エフォートの配分・配置デザインを援助するツールを開発します。また、ツールの普及促進のため、一般ユーザーが容易に利用可能なインタフェースを整備します。
  • 自然共生社会研究プログラムの他プロジェクト等で得られた、生物多様性に対する各脅威要因への生物種の応答、個別の対策技術の有効性、生態系サービス間のトレードオフ等の科学的知見について、統合解析に利用・公表等を行うために整理します。
  • 開発したツール、整備したデータベース、蓄積した科学的知見等の研究成果を公表、可能なものは提供します。さらに、これらの成果の普及と社会実装を促進するため政府機関・地方自治体・NGOなどの外部機関との情報交換・連携を進めます。



プロジェクト5:生態系機能・サービスの評価と持続的利用に関する研究

自然共生型流域および地域管理策を提案します



ミレニアム生態系評価以降、生態系と生物多様性の経済学(TEEB)の取組み、生物多様性および生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)の設立、Future Earthの始動など、生態系サービスの自然的・社会経済的価値の評価と、相互に関係しあう生態系サービスの包括的管理の重要性が高まっています。

本プロジェクトでは、地域(流域や島嶼など)を単位として、各地域の構成要素(森林、農地、湖沼、沿岸など)の内部および要素間(上流から下流など)の各種生態系機能・サービスを評価して、それらの維持メカニズムやトレードオフと駆動因を解明します。さらに、生態系の持続性と生態系サービスの持続的利用を考慮した自然共生型流域および地域管理策を提案します。 

  • サブテーマ1  霞ヶ浦流域における時空間の生態系サービス評価およびサービス間の関係に関する研究

霞ヶ浦流域を対象に、湖内および全ての小流域毎に各種生態系サービスの定量化・地図化を行います。特に、湖内については、40年近く継続されてきた霞ヶ浦長期モニタリングデータを活用して時系列の生態系サービスを評価して、時間的かつ空間的(湖と河川、上流域と下流域など)な生態系サービス間のトレードオフと駆動因やプロセスを明らかにします。同時に、生物多様性の評価を行い、生物多様性と生態系サービスの関係について分析します。
これらの分析を通じて、生態系サービス間のトレードオフの緩和や、生物多様性保全と生態系サービスの持続的な利用を考慮した流域管理策を提案します。

  • サブテーマ2 小笠原諸島の生態系の持続性に関する研究

環境が不安定であるため、生態系の変化への影響が早く検出されることが予想される小規模な淡水生態系を主な対象とした継続的な野外調査により、指標種の生息状況を把握し、同時に持続的に生存できる状態なのか検討します。 さらに、現地で採取した水に含まれる遺伝子の分析によって対象種の在不在が判別できるような生態系モニタリング技術を開発します。アンケート調査やweb解析等によって小笠原の生態系の中で特に観光客が興味を持つ構成要素を明らかにします。 本サブテーマの調査結果や先行研究の情報などを利用して生態系の数理モデルを開発し、小笠原諸島生態系が持続的な状態にあるか、特に、前述の観光客が興味を持つ構成要素が存続可能かどうかを、コンピューターシミュレーションを行って解析します。 また、環境試料タイムカプセル化事業と連携して、希少種のサンプル保存を進めます。

  • サブテーマ3 河川と海のつながりを重視した流域生態系研究

河川や海における人為的改変、流域開発に伴う負荷の増減、社会経済的な活用の増減、外来種の侵入、気候変動等が駆動因となる、流域生態系における生物の個体群維持機構と生態系機能へ及ぼす影響評価を介して、生物多様性保全と生態系サービスの持続的利用へ向けて管理と保全の枠組みを示します。
また、複数の地域におけるプログラムを選定し、各駆動因によって変化する多様な生態系サービスが相互にトレードオフに留まるのか、あるいはシナジー効果を得られるのに必要な条件を検討し、最終的に地域行政や地元の再生協議会との意見交流を交えて流域再生のシナリオを提示します。

Last updated Jan. 16, 2017