2024/03/252分で読めます
地球温暖化の要因は二酸化炭素であると考えられています。しかし、今すぐ排出をやめても、空気中の二酸化炭素は急には減りません。そこで、気温を上げる物質の中から、排出をやめると空気中の濃度もすぐに減る物質に着目すれば、地球温暖化を抑えられるのではないか、という考えが国際的に広まってきました。この物質は短寿命気候強制因子(SLCF)と呼ばれています。コラム2の図2にある、メタンやエアロゾルなどが当てはまります。
エアロゾルでは、ブラックカーボンの排出を減らせば気温は下がる(温暖化抑制)と見込まれますが、ブラックカーボンと同じ過程で放出される有機炭素エアロゾルの排出も減るので、冷やす効果が減ります(温暖化促進)。また、エアロゾル自体は健康に影響を及ぼすので(例えば、過去の『環境儀』21号、22号、54号を参照)問答無用で減らすべきものですが、減らすと気温は上がると見込まれます。将来に向けて、どのSLCFを削減するかは、大気環境と気候問題の両方を考慮して決める必要があり、非常に複雑な問題です(図)。
図 気候変動と大気汚染は密接にリンクしている人間が大気中に放出する温室効果気体・微量気体・エアロゾルを減らすことで、地球の気候変動や大気汚染にどのような影響があるかは、非常に複雑な関係になっています。これはIPCC-AR6-WG1(2021)のFAQ6.2の図1をベースに、日本語表記にしました。