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今日では、現場観測と人工衛星などによる遠隔観測や、数値モデル計算と組み合わせた解析により、領域から地球規模の温室効果ガス(GHG)の分布や大規模発生源からの排出量の理解が進んでいます。これと並行して、より詳細かつ複雑なGHGの変動を理解するため、現場での挑戦的な観測研究が世界中で進められています。
WMO(世界気象機関)による全球大気監視(Global Atmosphere Watch:GAW)プログラムを代表例として、さまざまな離島や遠隔地での定点観測、航空機や船などの大型の移動体を用いたGHGの観測が行われています(写真1)。現在では、二酸化炭素とメタン以外にも亜酸化窒素などのGHGや、大気汚染物質であると同時に気候変動を引き起こす物質でもある短寿命気候強制因子(Short-lived climate forcer)などの多成分を同時に計測できる赤外レーザー吸収分光計(IRLAS)が開発され、計測技術も進化しています。このようなIRLASへの観測装置の切り替えが進むと、従来の方法に比べて、観測プラットフォームを維持・管理するための労力やランニングコストを減らすことができます。このようなIRLASの普及がアフリカや南アメリカなど今までに系統的観測が実施されていない地域での観測を後押ししたことで、観測報告が増えてきています。
領域から地球規模のGHGの観測が進む一方で、近年は小規模なGHG発生源が集まった都市域の観測が重視されるようになってきました。米国のインディアナポリスやロサンゼルス、フランスのパリなどのメガシティーをはじめとして、世界の多くの都市で観測研究が行われるようになりました。それに併せて、IRLASも小型・軽量化して持ち運びしやすくなり、消費電力を抑えてバッテリーで稼働するIRLASのモデルが開発されました(写真2)。
日本の研究機関によるGHGの大気観測は、世界有数の規模で実施されているものが多くあります。例えば、日本のGHG観測研究の草分け的存在である東北大学は、国内線航路で民間旅客機を用いた二酸化炭素のフラスコ観測を世界に先駆けて1979年に、国際線航路では1984年に開始しました。このほか、1981年に気象庁、1982年に東北大学、1992年に国立環境研究所が船舶を用いた観測を開始しています。
さらに、2005年には、国立環境研究所と気象庁による民間旅客機を用いた大気観測「CONTRAIL(Comprehensive Observation Network for Trace gases by Airliner)プロジェクト」)が始まりました。
地上の遠隔地における現場観測については、1980年代以降、東北大学、国立極地研究所、気象庁および国立環境研究所により、国内では岩手県の綾里、小笠原諸島の南鳥島、沖縄県の与那国島や波照間島、そして北海道の落石岬において、国外では南極昭和基地と北極ニーオルスン基地に観測地点が設けられ、定点長期観測が始まりました。
東京圏では、国立環境研究所、東京大学大気海洋研究所、気象庁気象研究所および産業技術総合研究所による協力体制で、東京スカイツリーなど複数の地点で都市大気観測が行われています。
これらの観測ではIRLASが用いられています。ローコストセンサーによる系統的な観測はまだ実施されていませんが、注目度は高く、多くの研究機関でその導入が検討されています。
前述の通り、民間旅客機や船舶などの大型移動体による観測、沖縄県の波照間島や北海道の落石岬などの遠隔地での観測、そして、東京圏のスカイツリーなどにおける都市域大気観測が実施されています。これらの観測ではIRLASの配備がほぼ完了しており、GHG観測の効率化が進んでいます。一方で、都市域のGHG発生源をより詳細に理解するために、自動車にIRLASを搭載した観測なども試験的に実施されています。
また、温室効果ガス観測技術衛星(Greenhouse gases observation satellite:GOSAT)による宇宙からの遠隔観測、そして数値モデルによるシミュレーションも併せて行っており、地域から地球規模のGHGの分布や、地域・領域規模あるいは点発生源からのGHGの排出量など、GHGに関する総合的な理解が進んでいます。
温室効果ガス観測研究はどんなところでやっている?
2024/04/25