領域長あいさつ
生物多様性領域長 玉置 雅紀
生物多様性は、私たちの生活や経済活動を支える不可欠な基盤です。しかし現在、人間活動の拡大に伴い生態系の劣化が進み、生物多様性の損失が世界的な課題となっています。国際的には、2030年までの世界目標を示した昆明・モントリオール生物多様性枠組が採択され、日本においても生物多様性国家戦略のもと、「生態系の健全性の回復」を通じて「ヒトと自然との共存」と「自然資本の持続的な利用」を実現することが重要な目標として掲げられています。
生物多様性領域では、この社会的要請に応えるため、生態系の状況とその変化を的確に把握し、その回復と持続的利用に資する科学的知見の創出を目指した研究を推進しています。特に、長期モニタリングを基盤として、自動観測技術や環境DNAを活用した生物多様性観測手法の高度化を進めています。これらを活用した広域的な生物多様性観測を推進するとともに、30by30やネイチャーポジティブの実現に向けた評価・モニタリング手法や指標の整備を行っています。さらに、ヒトの関与による健全な生態系管理と自然との共存のあり方に関する研究にも取り組んでいます。
生物多様性領域では、科学に基づく観測と評価、そして社会と協働した生態系管理を通じて、ヒトと自然が共存する持続可能な未来の実現に貢献します。
研究概要
自然共生分野
自然共生研究分野は、国立環境研究所の戦略的研究分野の一つであり、生物多様性領域が中心となって推進しています。本分野は、「総合的環境研究プロジェクト」と「基礎・基盤的研究」の二つの柱で構成されています。
総合的環境研究プロジェクトでは「ヒトと自然の関係の適正化」、「人為的環境撹乱の統合的影響評価と保全戦略の構築」、「環境変動に対する生物応答メカニズムの解明」の3つのサブプロジェクトを通じて、生態系の健全性の回復とヒトと自然との共存、自然資本の持続的利用を目指します。
基礎・基盤的研究では、先端・萌芽的研究、政策対応研究、知的研究基盤の整備を推進するとともに、「環境DNA研究拠点」を新たに設置し、環境DNA解析の普及と地域研究機関をつなぐハブ機能の構築を進めます。
さらに、昆明・モントリオール生物多様性枠組の達成に資する科学的知見を創出し、ネイチャーポジティブの実現と自然共生社会の構築に貢献します。
組織
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生物多様性評価・予測研究室生物多様性の評価・予測手法の開発に関する研究ならびに保全手法に関する研究を行います。
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生態リスク評価・対策研究室生物多様性・生態系を脅かすリスクの評価および対策手法の開発に係る研究を行います。
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生理生態研究室環境に対する生物の応答・順化・適応機構を解明する研究を行います。
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生物・生態系機能研究室生物および生態系の機能を明らかにし、それらの機能の活用・保全に関する研究を行います。
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生物多様性保全計画研究室生物多様性と生態系サービスの評価に基づく保全計画立案に関する研究を行います。
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生物多様性資源活用研究推進室生物多様性や生態系の保全に資する生物資源の系統保存やモニタリングに関する事業ならびにそれらに係る研究を行います。
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環境遺伝情報研究推進室生物多様性や生態系の評価と保全を支える遺伝情報の取得・解析に関する事業と、その関連研究を行います。
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琵琶湖分室滋賀県琵琶湖環境科学研究センター内に設置された、地域環境保全領域と生物多様性領域が共同管理する研究室で、琵琶湖を主対象とした湖沼環境に関する研究を行っています。
グループ
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生物多様性評価連携研究グループ生物多様性観測とデータ利活用に取り組む国内・国際的ネットワークの強化や相互連携のハブとなり、生物多様性保全や関連政策へ貢献するコミュニティの醸成に取り組みます。
研究者紹介
新着情報
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報道発表国立環境研究所の研究チームは、車載カメラでの動画撮影と統計モデルを組み合わせることで、効率的に広範囲にわたって大型動物の個体数を推定する手法を開発しました。その手法を福島第一原発事故後の避難指示区域とその周辺の水田で撮影された動画中のサギ類に適用したところ、避難指示区域内では、水田を利用するサギ類が区域外に比べて顕著に少ないことを示しました。
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報道発表イリオモテヤマネコは、絶滅が危惧される我が国の固有亜種(注1)です。現在の個体数はおよそ100頭と推定されており、今後さらに減少する要因として懸念されるのが「感染症」です。すでにイエネコで致死性が高いことが確認されている感染症が、近縁であるイリオモテヤマネコでも発症・重症化する可能性があると指摘されています。
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報道発表国立環境研究所の岡本遼太郎研究員らが、AIと音響シミュレーションを使ってセミの鳴き声から種を自動識別する技術を開発しました。
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報道発表国環研のタイムカプセル化事業で保存された11種の希少鳥類の培養細胞を用いた網羅的な遺伝子解析により、高病原性鳥インフルエンザウイルスへの抵抗性に関与する2種類の抗ウイルス遺伝子を特定しました。
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報道発表国の天然記念物に指定されているムラサキオカヤドカリは、台湾での需要と市場価値の高まりに対して十分とは言えない法的規制が、日本からの密輸出を引き起こしている可能性を示しました。
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報道発表大阪大学と国環研の研究チームは、「Biome(バイオーム)」を活用した動植物の写真投稿を促すインセンティブを実施し、投稿の“量”だけでなく“中身”にも影響を与える可能性を発見しました。
研究成果
刊行物
環境儀
国立環境研究所ニュース(テーマ別記事)
国立環境研究所研究プロジェクト報告(旧特別研究報告)
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SR-146-2024
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SR-145-2024
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SR-143-2024
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SR-138-2020
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SR-127-2017
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SR-125-2017
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SR-124-2017
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SR-116-2016
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SR-103-2012
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SR-99-2011
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SR-98-2011
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SR-85-2008
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SR-84-2008
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SR-72-2006
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SR-68-2006
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SR-57-2003
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SR-51-2003
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SR-44-2001
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SR-24-'98
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SR-4-'90
国立環境研究所研究報告
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R-183-2004
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R-176-2003
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R-167-2001
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R-153-2000
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R-146-'99
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R-134-'95
データベース/ツール
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当研究所の発足以来、約40年間継続している霞ヶ浦長期モニタリング研究で蓄積されてきた水質および生物の観測データを提供
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高い透明度で知られる摩周湖で長年実施しているモニタリング調査の概要、観測結果、観測データ、関連文献情報を提供するデータベース
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日本国内で在来生物・生態系への悪影響が懸念されている外来種について、生態学的情報を体系的に整理して提供するデータベース
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兵庫県南部ため池群の研究で蓄積された生物多様性情報を地理情報システム(GIS)を用いて提供するシステム
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国立環境研究所の環境試料タイムカプセル棟および京都大学野生動物研究センターで保存している野生動物の細胞・組織・DNAのリストをデータベース化した検索システム
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微生物系統保存施設で保有している絶滅危惧藻類の保存株を検索できるシステム
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微生物系統保存施設で維持されている保存株の基本的な株情報、文献情報、細胞のイメージデータ等
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海外から鳥インフルエンザウイルスが侵入するリスクの高い国内地域を予測するマップ(行政機関対象)
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1988年から1998年にかけて行われた第4,5回環境省自然環境保全基礎調査の植生調査データの集約と標準化を行い、全国スケールで利用可能な土地利用データとして公開
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「日本全国標準土地利用メッシュデータ」を用いて、土地利用のモザイク性の観点から農業ランドスケープにおける生物多様性を評価する「さとやま指数」を日本全国を対象に算出したもの
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ユスリカDNAバーコーディングのために収集された標本のDNAバーコード、分類群情報、採集地情報等を格納したデータベース検索システム
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世界のマングローブの分布図およびマングローブの構成植物種リストをはじめ、熱帯・亜熱帯沿岸生態系の基礎情報を集約したサイト
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GBIFに登録されたオカレンスデータ(観察記録、採集記録など)を抽出してマッピングするシステム、国立環境研究所の研究データをマッピングするシステムを提供
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「日本の有藻性イシサンゴ類~種子島編~」(2015年発行)の目録に掲載された情報および画像を検索するシステム
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福島県東部において実施中の鳥類モニタリングの手法・成果、モニタリングのデータを地図上で可視化するツール、市民参加型イベントバードデータチャレンジ等の情報を提供
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クイズ形式でトレーニングしながら野鳥の鳴き声を覚えるためのツールです。
「野鳥のこえからわかること」の傘下にあります。
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国立環境研究所の環境ゲノム科学研究推進事業の成果として絶滅危惧種を中心に全ゲノムのドラフト配列(FASTA形式)を公開
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琵琶湖を自由に泳ぎ回るコイの背中に動物搭載型のビデオカメラをとりつけて撮影した、「コイ目線の」琵琶湖の水中映像を紹介しています。
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小笠原諸島で採集した生物標本の分類情報とDNAバーコードをデータベース化し、FASTA形式のDNA塩基配列およびオカレンスデータを提供しています。
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環境研究総合推進費(S-15)「社会・生態システムの統合化による自然資本・生態系サービスの予測評価」による研究の概要、成果(データベース検索システム、Web GIS等)およびポリシーブリーフを公開