国立環境研究所一般公開2025を開催しました

社会システム領域からの開催報告をお届けします
2025.10.31

 2025年10月25日(土)、国立環境研究所の一般公開を開催しました。小雨模様の中での開催でしたが、昨年の2倍以上となる約2,100名の方にご来場いただき、大盛況の中で終了しました。
 社会や人間行動と環境との関係に注目して研究に取り組んでいる社会システム領域では、以下四つのイベントをご用意し、皆様をお迎えしました。この記事では、それぞれのイベントのご報告をさせていただきます。

1) 講演会「研究者に聞いてみよう!『ココが知りたい地球温暖化』解説&トーク」
2) 体験型クイズ「未来を決めるのはキミだ!~脱炭素社会への挑戦~」
3) 展示「キミはどれだけ知ってる?気候変動の“本当のところ”」
4) 体験型ツアー「進路のヒントに!科学者とめぐる“環境研究”界隈」

イベント1) 研究者に聞いてみよう!『ココが知りたい地球温暖化』解説&トーク

 地球温暖化の「なぜ?」に研究者が答える国立環境研究所の人気コンテンツ『ココが知りたい地球温暖化』対策編から、①家庭でできる効果的な脱炭素対策は?、②肉食をやめて菜食にすると環境に良いの?、③石油業界で働く友人が失業するのは仕方ない?の3問をピックアップ。それぞれの疑問について、金森有子主幹研究員、土屋一彬主任研究員、久保田泉主幹研究員が30分で解説しました。

 未就学児から大人まで、各回20名以上の方にご参加いただき、質疑応答の時間も熱心な質問が相次ぎました。つくば市内には研究者が多く住んでいますが、実際のところ研究者と直接話す機会は、なかなかないかもしれません。今回のイベントが環境研究や環境研究者を身近に感じることにつながり、同時に環境問題について考えるきっかけを提供できていれば嬉しいです。

 解説トークの内容が気になるという方や解説してくれた研究者についてもっと知りたいという方は、ぜひ公開中の記事も読んでみてください。質問からココが知りたい地球温暖化の解説記事に、研究者の名前からそれぞれのインタビュー記事にリンクしています。
  〇家庭でできる効果的な脱炭素対策は?金森有子主幹研究員
  〇肉食をやめて菜食にすると環境に良いの?土屋一彬主任研究員
  〇石油業界で働く友人が失業するのは仕方ない?久保田泉主幹研究員

菜食主義は脱炭素社会実現のための「唯一の選択肢」ではないことを説明する土屋主任研究員
(画像は個人が特定されないように一部加工しています)

イベント2) 未来を決めるのはキミだ!~脱炭素社会への挑戦~

 「未来を決めるのはキミだ!~脱炭素社会への挑戦」は、日本の温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするにはどうしたら良いか、クイズを解きながら考えてもらう体験型の展示です。開催は今年で3回目で、350名以上の方に挑戦いただきました。

 クイズは全部で5問。①家での暮らし、②移動方法、③電気の利用、④食材の選び方、⑤商品の買い物について「キミの選択」を考えてもらい、5つの選択と、大気中のCO2を回収し貯留する技術など、「未来の技術」を獲得できる輪投げゲームで獲得した新技術の組み合わせの結果で、2100年に地球の気温が何℃上昇するかを計算し、選択の結果をお知らせしました。

 脱炭素社会の実現に向けて、私たちは今すぐに行動を開始する必要があります。「脱炭素社会の実現のためにキミやキミの家族ができること」も公開していますので、来場できなかった皆様もぜひご覧いただければと思います。

 また、会場では初披露となる「研究者の未来予測はどこまで現実になった?30年前の環境問題予測を検証」と題した子ども向けの動画も上映しました。

結果はいかに?選択結果はその場で印刷してお持ち帰りいただきました
(画像は個人が特定されないように一部加工しています)

イベント3) キミはどれだけ知ってる?気候変動の“本当のところ”

 気候変動に関係する実際のデータに注目し、パッと見て学んでいただける巨大ポスターを“アメコミ風”デザインにてご用意しました。あえて対話ではなく、通りかかった人がちらっと見るだけで「へぇ!そうなんだ!」と思ってもらえるような展示にしました。近くで実施していたコラボ展示「昆虫研究×蟲神器」入場のための行列に並んでいただいていた皆様の“学び"にもつながったでしょうか。

 イベント会場では、海の異変を記録したドキュメンタリー映画「ここにいる、生きている。~消えゆく海藻の森に導かれて~」のハイライト版も上映しました。各回の上映後には、作品に登場した熊谷直喜主任研究員が来場者の質問に直接答える場面も。気候変動が暮らしに影響を与えている現実がまざまざと伝わる映像が秀逸な作品ですので、さらに多くの方に知っていただければと思います。

イベント4)進路のヒントに!科学者とめぐる“環境研究”界隈

 “研究の現場”を知ってもらうための中高生向け特別企画を対話オフィスの主催で実施し、午後開催の「水生生物・大気汚染・気候変動の三つの分野について『広く』学ぶコース」に、ガイド役として社会領域の畑奬研究員が登壇しました。

 畑研究員は気候変動をテーマに、カーボンニュートラルな社会を目指すにはどんな取り組みや仕組みが必要かを一緒に考える時間を担当。講演に続くグループワークでは、例えば「ライドシェアリング」などの具体的なゼロカーボンアクションについて、「今の社会で実施できると思うかどうか」「社会の仕組みが変わったらどうか」を5名ずつ3グループに分かれて話し合いました。

 終了後、畑研究員は「中高生がゼロカーボンアクションを自分の生活に重ねながら、『自分にもできるだろうか』と真剣に考えている姿が印象的でした。彼らの率直な思いや気付きを聞くことができ、今後の研究や社会への発信にもつながる、貴重で学びの多い時間だったと感じています」と話しました。イベント詳細についてはこちらもご覧ください。

参加者に質問も投げかけながら、地球温暖化について説明する畑研究員
(画像は個人が特定されないように一部加工しています)

 ご来場いただいた皆様、実施にあたりご協力いただいた皆様に、この場を借りてお礼を申し上げます。誠にありがとうございました。

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