論文情報
How Will Deforestation and Vegetation Degradation Affect Global Fire Activity?
(森林伐採・植生劣化が全球の野外火災発生に及ぼす影響)
著者: Chae Yeon Park, Kiyoshi Takahashi, Junya Takakura, Fang Li, Shinichiro Fujimori, Tomoko Hasegawa, Akihiko Ito, Dong Kun Lee
年:2021
掲載誌:Earth’s Future, 9, e2020EF001786
キーワード
野外火災、土地利用、気候変化、社会経済変化
概要
世界的にみると、多くの森林火災が森林伐採に関連して発生している。しかし、森林伐採・植生劣化による火災(DDF)の現状及び将来の発生の現況評価・将来予測の研究は少ない。本研究では、まずDDFの複数因子を考慮した評価を実現するために、既存の陸面モデルCommunity Land Model (CLM)の火災モデルの拡張を行った。これにより、因子(気候変化、木材伐採、農地・牧草地・都市の土地利用変化)別および季節別のDDFを区別して扱うことが可能となった。さらに、同モデルを用いて、2つの排出シナリオ(RCP2.6とRCP6.0)下での2050年代・2090年代での野外火災について予測を実施した。
世界全体で見た場合、野外火災は現状の452Mha/年から、2090年代には、RCP6.0の場合で211~378Mha/年に、RCP2.6の場合で184~333Mha/年に、いずれも主として人口変化・経済成長の影響を受けて減少することが予測された。また、森林伐採・植生劣化による火災(DDF)は、現状の73Mha/年から、RCP6.0の場合で54~66Mha/年に、RCP2.6の場合で45~55Mha/年に、減少すると予測された。また、DDFの減少の主因は、気候変化、特に降水量の増加であることが示された。DDFへの土地利用変化の寄与については、現状と同等か若干小さめとなる。将来的に、南米、インドネシア、豪州がDDFの高リスク地帯になるが、これは主として木材伐採と牧草地拡大によるものである。これらの地域では、適切な土地・火災管理政策を通じて火災被害の軽減に取り組む必要がある。

