Will international emissions trading help achieve the objectives of the Paris Agreement?

Shinichiro Fujimori, Izumi Kubota, Hancheng Dai, Kiyoshi Takahashi, Tomoko Hasegawa, Jing-Yu Liu, Yasuaki Hijioka, Toshihiko Masui and Maho Takimi
2017.1.16

論文情報

 Will international emissions trading help achieve the objectives of the Paris Agreement?
(国際排出権取引はパリ合意の目標達成の手助けになるか?)

著者:Shinichiro Fujimori1,2, Izumi Kubota1, Hancheng Dai1, Kiyoshi Takahashi1, Tomoko Hasegawa1,2, Jing-Yu Liu1, Yasuaki Hijioka1, Toshihiko Masui1 and Maho Takimi3

1 Center for Social and Environmental Systems Research, National Institute for Environmental Studies (NIES)
2 International Institute for Applied Systems Analysis
3 Mizuho Information & Research Institute, Inc.

発表年:2016
雑誌名:Environmental Research Letters

論文へのリンク(英文のみ)

概要

パリ協定のもと締約国は、各国の排出削減約束、目標を達成するための措置、進捗状況の報告要件を示し、各国が自主的に決定する約束草案(INDC)を提出した。一方、気候変動緩和策には、相応の費用がかかるが、野心的な緩和行動のためには、費用対効果の高い、資源の動員を促すメカニズムとアプローチの確立が望まれる。国際炭素排出量取引は、世界全体の削減コストを低減する経済的に費用対効果の高い方法であることはよく知られている。 しかし、INDCの文脈における排出権取引の有効性を明らかにした研究はこれまでない。ここでは、現在のINDCにおける排出権取引の有効性を評価した。
排出権取引は、図1に示すように、2030年の排出削減にかかる世界的な厚生損失をそれぞれ80%と50%(約230億〜210億US $に相当)減少させた。排出権取引がない場合は2030年において0.4%の経済損失があったが、それが0.1%まで回復した。先進国は、排出権取引がない場合、損失が大きい傾向にあるが排出権取引の導入により損失は大幅に減少した。例えば、2030年の日本、米国、EUの厚生損失はそれぞれ0.7%、0.8%、0.5%であり、排出権取引は-0.2%、0.2%、-0.1%へとそれぞれ減少させた。対照的に、途上国の状況は様々であった。例えば、中国とインドは、排出権取引のために負の影響を受けるが、アフリカと南アジアは正の影響を受ける。図2に示すように、開発途上国の炭素価格は、排出権取引がない場合ほとんど無視できるレベルのものであったが、国内の炭素市場を国際市場に開放する場合、これらの地域の炭素価格は10 $ / tCO2に上昇する。

図1排出権取引がある場合(w / ET)およびない場合(w / o ET)のすべての地域のベースラインシナリオと比較した、2030年の厚生損失率
図2 排出権取引がある場合(直線)およびない場合(青のプロット)のすべての地域の炭素価格