Smart Community Recovering from the Tsunami-Disaster: Case Study of the Community Energy Supply Project in Shinchi Town, Fukushima
(津波被害からの復興におけるスマートコミュニティ:福島県新地町における地域エネルギー事業の事例)

平野勇二郎、中村省吾、戸川卓哉、藤田壮、安達健一
2021.11.30

論文情報

Smart Community Recovering from the Tsunami-Disaster: Case Study of the Community Energy Supply Project in Shinchi Town, Fukushima
(津波被害からの復興におけるスマートコミュニティ:福島県新地町における地域エネルギー事業の事例)

著者:平野勇二郎、中村省吾、戸川卓哉、藤田壮、安達健一
年:2021
掲載誌:Global Environmental Research, 24 (2), 199-206


キーワード

CO2排出削減、コージェネレーション、地域エネルギーマネジメント、分散型電源、地域熱供給、復興まちづくり


概要

この論文では福島県の北端に位置する新地町における復興まちづくりの評価事例を紹介します。
 

新地町では、東日本大震災による甚大な被害を受けた後、復興まちづくりの一環として拠点地域における環境配慮型の地域のエネルギー供給システムが導入されました。国立環境研究所は、そのシステムの計画や省エネルギー・CO2削減効果の評価などの学術的な観点から支援しています。この事業では、地域のエネルギー供給拠点「新地エネルギーセンター」とその運用会社「新地スマートエナジー株式会社」が設立され、JR新地駅周辺の各施設に電力・熱エネルギーを供給しています(図1)。新地エネルギーセンターには発電の排熱を暖房・給湯の熱として利用するコージェネレーションシステムや、排熱から冷房用の冷水を生成する排熱利用吸収式冷温水機(ジェネリンク)が導入され、高効率なエネルギー管理を実現しています。

 

私たちは、この地域エネルギー事業の省エネルギー評価を実施しました。ただし、エネルギー需要側施設の建設が段階的に進んでいる状況においてCOVID-19の影響が生じたことから、当初の計画通りの運用状況での評価が実施できなかったため、エネルギー供給開始後の7か月間(2019712月)のデータを分析しました(図2)。一連の分析の結果、コージェネレーションの排熱利用率は8090%、供給システム全体の総合効率は70%前後となり、計画通りのエネルギー需要側施設が揃っていない中での暫定的な評価となりますが、この段階では適切な運用がなされていることを確認しました。

 


図1  新地エネルギーセンターにおける電力・熱エネルギー供給システムとエネルギーの流れ
図2  時刻別エネルギー供給(8月の例)