国際機関とアジア8カ国を代表する政策決定者ら17名が社会システム領域訪問

2024.3.14

 国立環境研究所(国環研)社会システム領域は3月13日、環境省が主催し、アジア大気汚染研究センターが実施する「アジアにおける大気環境改善のための統合プログラム(IBAQ)能力構築に向けた研修」の一環として、アジア各国から訪れた政策決定者ら17名を研究所にお迎えし、脱炭素対策とその相乗便益に関する具体的な研究事例を紹介しました。

(写真1) アジア各国から訪れた政策決定者らに、大気汚染と温室効果ガス削減策の相乗効果について説明する花岡達也室長

 訪れたのは、国連環境計画(UNEP)などの国際機関の代表者に加えて、インド、インドネシア、カザフスタン、キルギス、ラオス、モンゴル、スリランカ、ウズベキスタンの8カ国の政府機関の代表者。研修は、アジア地域における大気汚染の改善と温室効果ガス排出削減の解決を目指して、温室効果ガスの削減につながる技術を他国で普及させることで自国の削減分として算入できる「二国間クレジット制度(JCM)」(注1)のプロジェクト立ち上げのためのアイデアを得ることを目的に実施されました。なお、ラオスからの参加者は、かつて国環研で研究生(連携大学院の博士課程に在籍)、リサーチアシスタントとして一緒に研究をされていた方です。

(写真2) 熱心に説明を聞く参加者の様子

 研修では、増井利彦領域長が、温室効果ガス排出量の予測、対策や影響を評価するために国環研を中心に発展させてきたアジア太平洋統合評価モデル(AIM:Asia-Pacific Integrated Model)の全体像を紹介。花岡達也室長が、大気汚染と温室効果ガス削減策の相乗効果について、AIMを用いてどのように評価を行っているのかを説明しました。

 続けて、タイ、インドネシア、ネパール出身のCHAICHALOEMPREECHA Achiraya特別研究員、ROSSITA Annuri特別研究員、RAJBHANDARI SAINJU Salony特別研究員 がそれぞれ、出身国における脱炭素対策とそれらがもたらす相乗便益について、AIMを用いて評価したさまざまな具体例を説明しました。参加者からは各国の研究事例に関して具体的な質問が相次ぎ、有意義な議論が行われました。

(写真3) インドネシアにおける森林伐採や森林火災に関する参加者からの質問に答えるROSSITA Annuri特別研究員

 このほか、社会実装に向けた準備が進む研究事例として、藤井実室長から廃棄物の焼却熱をエネルギ—として利用する新たな仕組み「LCCN(ライフサイクルカーボンニュートラル)」の紹介もありました。

 大気汚染の改善と温室効果ガス排出削減の対策においては、相乗効果をもたらす政策の実施が求められています。社会システム領域は、本研修が新たなJCMプロジェクトの立ち上げのきっかけとなることを願っています。

(注1)JCMは温暖化対策の国際的な合意である「パリ協定」で認められた国家間の排出量取引制度。日本はこれまでに29の国とJCMを締結しており、東南アジアを中心に太陽光やバイオマス発電、省エネ設備など250件以上のプロジェクトを実施しています。

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