深いところからきますね(笑)。
農村計画学は、農業工学や、農業土木という分野から派生したものです。だから工学系というか、土木系のところなんですけど、「計画」なので、その中でもどちらかというとソフト的なところを扱うような分野です。元々は、農家を中心とした農村地域における所得の向上や住みやすい居住環境のための計画づくりといった農業計画的な話題を取り扱っていましたが、近年は農村地域でも農家の数がどんどん減ってきていて、(農村に)農家以外の人も多く住むようになってきたため、いろんな新しい課題が出てきています。
こういった農村地域で農家と非農家が混ざって住むようになることを「混住化」と言うんですが、これに伴って住んでいる人たちの価値観も多様化してきました。例えば「農業用水路を掃除しよう」となったら、みんな農家なんで、「じゃあやろうか、やろうか」と言って、当番とかでみんなでやったりしてました。皆さんに関係する問題だからみんなで解決する。それが最近だと、「やろう」と言っても半分ぐらいは農家ではない人たちなので、「何でうちと関係ないことしないといけないんですか」となってしまって維持できなくなるとか。そういう、ある種の現在起こるべくして起こってる問題ではあります。
そうやって、農村計画自体が取り扱う問題もどんどん変わってきてるんです。元々はその農村が抱える課題を解決するためにどういう計画を立てたらいいかという分野だったので、最初は農業のことを扱っていれば良かったんですが、最近は農村の課題も多様化してまして、コミュニティの維持などは都市部でも大きな課題になっていますし、獣害も人間の生活圏にまで出てくることが増えてきており、もう農家さんだけの問題とは言えなくなってきています。
要するに、農村計画はそういう農村の持ってるいろいろな問題をいろいろな手法を使って解決しようという分野なんです。なので、(手法に捉われない)何でも屋さんとも言えます。農村にある多様な問題に対して使えそうなアプローチを外から持ってきて、組み合わせたりしながらやっていく分野ですね。そういう意味では、学問としてはっきり説明しづらいところもあります。
学会にもいろんな分野の方がいます。環境系の人もいれば、ランドスケープといって、農村の景観を何とかする人もいれば、さっき言ったような獣害の専門家もいれば、また農業そのもののことをやってる人もいます。農業経営とか、農業経済とかですね。あとは建築系の人もいます。こんな人たちが集まって、農村地域の課題を解決しようという分野ですね。大本の農業土木学は100年以上の歴史があるんですけど、農村計画学自体は50年くらいの比較的新しい分野です。