10月19日(土)、国立環境研究所の一般公開を開催しました。今年は気候変動による暑さ対策のため、例年7月に実施してきた「夏の大公開」を秋に実施することになり、来場者が少なくなるのではないかという不安も抱えての開催でしたが、約950名もの方にご来場いただき、楽しい1日を過ごすことができました。
人間社会や人間行動と環境との関係に注目して研究に取り組んでいる社会システム領域では、体験型の展示「未来を決めるのはキミだ!~脱炭素社会への挑戦~」と、トーク「空から地面の温度を“見て”みよう」をご用意した他、対話企画「これからの50年を研究者と話そう!『ココが知りたい地球温暖化』」の開催にも協力しました。
未来を決めるのはキミだ!~脱炭素社会への挑戦~
「未来を決めるのはキミだ!~脱炭素社会への挑戦」は、日本の温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするにはどうしたら良いか、クイズを解きながら考えてもらう体験型の展示です。昨年、好評をいただいたため今年も実施することとなり、140名以上の方に挑戦いただきました。
クイズは全部で5問。①家での暮らし、②移動方法、③電気の利用、④食材の選び方、⑤商品の買い物について「キミの選択」を考えてもらい、5つの選択と、大気中のCO2を回収し貯留する技術など、「未来の技術」を獲得できる輪投げゲームで獲得した新技術の組み合わせの結果で、2100年に地球の気温が何℃上昇するかを計算し、選択の結果をお知らせしました。
脱炭素社会の実現に向けて、私たちは今すぐに行動を開始する必要があります。解説ページには、「脱炭素社会の実現のためにキミやキミの家族ができること」をまとめましたので、来場できなかった皆様もぜひご覧いただければと思います。
空から地面の温度を“見て”みよう
つくば科学教育マイスターでもある一ノ瀬俊明シニアリサーチアドミニストレーターは、「温度の見えるカメラ」で撮影した動画を上映しながら、それぞれの場所の温度の特徴などを解説するトークショーを実施しました。
20分のトークショーを4回実施し、小学生を中心に、毎回約10名のご参加をいただきました。上映したのは、洞峰公園や土浦花火大会の様子、鹿島スタジアムなどをドローンで空から撮影した動画。サーモカメラで撮影した「熱画像」と「可視画像(通常の画像)」を二つ並べて上映し、違いを観察してもらいました。会場近くを通行中に足を止めて話を聞いてくださる来場者も多く、近年の猛暑で暑さへの関心が高まっていることがうかがえました。
トークの後は、参加者にサーモカメラを渡して集合写真を撮影してもらいました。モニターの熱画像を見ながらシャッターを切るという体験が初めてという方も多く、楽しい撮影会となりました。撮影した画像は後日、希望者の皆様にプレゼントしました。
これからの50年を研究者と話そう!『ココが知りたい地球温暖化』
気候変動の疑問に研究者が答える国立環境研究所の人気コンテンツ『ココが知りたい地球温暖化』の刷新作業が進んでいます。そのお知らせも兼ねた対話イベントも実施しました。対話オフィスの主催で、社会システム領域は「イベント3: 脱炭素社会では仕事がなくなる人がいる?仕方がないこと?」を担当。事前登録いただいた小学生から当日参加の大人まで、10名程の方に参加いただきました。
久保田泉主幹研究員が、「地球の平均気温上昇を抑えるためにエネルギーの使い方を変えていくことになるが、脱炭素社会になりさえすれば何でもよいわけではなく、気候変動対策と社会的公正を両立させる、公正な移行が重要」と話題提供しました。その後、①脱炭素でなくなりそうな仕事は何か、②仕事を失ってしまう人を守るどんなサポートが必要か、③脱炭素社会で流行りそうな仕事は何かを考えてもらいました。
参加者による発表では、②については「ただ仕事を紹介すればよいわけではなく、その人がやりたい仕事や向いている仕事を紹介する必要がある」という発言が相次ぎました。これは、SDGsの目標8など国際的な議論でも指摘されている点で、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)が重要であるとされています。③では、「二酸化炭素を排出しない製品・サービスを扱う仕事」を挙げる方が多かった中で、「そうした製品・サービスを紹介するインフルエンサー」という意見もありました。
小中学生には難しいのではないかと心配していましたが、参加者は皆、研究者やスタッフ、他の参加者と話しながら、一生懸命考え、発表してくださいました。脱炭素社会への移行のあり方についても目を向けるきっかけになれば嬉しいです。
ご来場いただいた皆様、実施にあたりご協力いただいた皆様に、この場を借りてお礼を申し上げます。誠にありがとうございました。