甲斐沼美紀子名誉研究員(IGES研究顧問) が「KYOTO地球環境の殿堂」の殿堂入り者として表彰されました

2024.10.17

 世界で地球環境の保全に多大な貢献をされた方々の功績を讃える「KYOTO地球環境の殿堂」の第15回表彰式が2024年10月14日、京都市の国立京都国際会館で開催され、国立環境研究所の甲斐沼美紀子名誉研究員(地球環境戦略研究機関 研究顧問)が、山階鳥類研究所の山岸哲名誉顧問、ケンブリッジ大学のパーサ・ダスグプタ名誉教授とともに、殿堂入り者として表彰されました。

 甲斐沼名誉研究員は、地球温暖化問題を統合的に評価するコンピューターシミュレーションモデル「アジア太平洋統合評価モデル(AIM:Asia-Pacific Integrated Model)」 を京都大学らと共同で開発し 、温暖化研究を推進してきました。また、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の評価報告書の執筆に長年携わり 、2018年の「1.5℃特別報告書」の執筆者の一人として「パリ協定の長期目標を2℃から1.5℃に強化する知見を広めた」として、今回の殿堂入り者に選出されました。

 表彰式では、「KYOTO地球環境の殿堂」運営協議会の山極壽一会長による式辞、京都府の西脇隆俊知事、京都市の松井孝治市長ら による主催者挨拶に続き、殿堂入り者に表彰状と記念品(西陣織ポートレイト)が授与され、続けて甲斐沼名誉研究員から、AIM開発当初から現在まで協力しあってきた国内外の仲間への感謝と、この度の栄誉に対する喜びが述べられました。

(写真1)国立京都国際会館の展示スペースに展示されている第15回殿堂入り者の紹介と寄贈品。

 表彰式に続いて開催された京都環境文化学術フォーラム国際シンポジウムでは、殿堂入り者による記念講演が行われ、甲斐沼名誉研究員は、「なぜ温度上昇を1.5℃以下に抑えなければいけないのか」と題し、1.5℃上昇と2℃上昇が与える影響の違いや 、脱炭素社会実現のために取り組むべき課題などについて講演を行いました。

 その後、京都府内の高校生によるプレゼンテーションと殿堂入り者を交えたパネルディスカッションが行われました。参加者は、事前に勉強会に参加して気候変動に関する理解を深めており、気候変動を自分事として理解するための「気候生徒会議」の開催や、給食から考える食品ロス削減、農業に不可欠なリンの循環利用などの提案にまとめ、発表しました。甲斐沼名誉研究員は、「今回参加した高校間で連携して食品ロスやリンの循環利用をテーマとした『気候生徒会議』を開催したり、食品や農業、漁業関係者に自分たちから共同活動を 提案したりするなど、ともに考え、行動する仲間を増やしていってほしい」と助言しました。また、最後に、AIM開発の中心であった故森田恒幸氏(国立環境研究所元領域長)にかつて教えられた「T字型の人」という言葉を紹介し、「皆さんもT字型の人、つまり一つのことを深く探求しつつ、同時にいろいろなことに広く関心を持つ人になってほしい」というメッセージを伝えました。

 社会システム領域では、長年地球温暖化研究に貢献してこられた 甲斐沼名誉研究員に心より祝意を表するとともに、今後のますますのご活躍を祈念いたします。

(写真2)甲斐沼名誉研究員の寄贈品。自身が取りまとめた書籍「CLIMATE POLICY ASSESSMENT:Asia-Pacific Integrated Modeling」(Springer Japan社、2003年)とAIMの仲間へのメッセージ。

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