Differing spatial patterns of the urban heat exposure of elderly populations in two megacities identifies alternate adaptation strategies
(2都市における高齢者の暑熱曝露の空間パターンの違いによる代替適応戦略の特定)

Chae Yeon Park, James H Thorne, Shizuka Hashimoto, Dong Kun Lee, Kiyoshi Takahashi
2021.7.28

論文情報

Differing spatial patterns of the urban heat exposure of elderly populations in two megacities identifies alternate adaptation strategies
(2都市における高齢者の暑熱曝露の空間パターンの違いによる代替適応戦略の特定)

著者: Chae Yeon Park, James H Thorne, Shizuka Hashimoto, Dong Kun Lee, Kiyoshi Takahashi
年: 2021
掲載誌: Science of The Total Environment, 146455

キーワード

暑熱ハザード、都市ヒートアイランド、気候変化、顕熱フラックス、適応能力、高齢者人口の脆弱性

概要

都市部での暑熱ハザードへの高齢者の曝露をマッピングすることは、気候変動下で激化する都市暑熱に対する適応戦略を検討・提示するうえで重要です。しかし、地球規模の気候変動予測は、これまで都市のヒートアイランド効果、特に都市の3次元特性を考慮したものとの統合が不十分であり、結果的に詳細なマッピングが不足しています。本研究では、現在(2006-2015)と2つの将来期間(2040年代と2090年代)の気候シナリオを使用して、2つの東アジアの大都市(ソウルと東京)における高齢者の致命的な暑熱曝露の空間パターンを比較しました。分析にあたっては、気候変動予測(排出削減努力が行われず21世紀を通じて温室効果ガス排出量が大きい「RCP8.5-SSP5排出シナリオ」を前提とした気候予測)と、地域の都市特性および人口統計とを、統合的に利用しました。

現在期間については、最高気温が比較的高く、また緑地が少ないことから、都市暑熱に曝される高齢者人口のホットスポットは東京でより広く見られました。一方、将来期間については、高齢者が増えることでソウルでホットスポット(大きな暑熱ハザードと高い高齢者人口密度が重なる地域)が広く見られるようになります。2040年代には、ソウルの面積の約20%、東京の0.3〜1%がホットスポットとなり、2090年代にはそれぞれ25〜26%と2〜3%に増加すると予測されました。

本研究で示すホットスポットの空間パターンに基づき、異なるタイプの対策優先地域の識別が可能になり、また、評価対象とした2都市において異なる適応戦略を取ることが適切であることを示唆出来ました。本研究で構築したアプローチは、高齢者の人口密度が高く、暑熱ハザードの大きなその他の都市での持続可能な熱環境を検討するためにも有用です。

図1: 現在期間(2006~2015年)のソウルと東京の、(a)顕熱フラックス、(b)高齢者人口密度、(c)都市暑熱への高齢者曝露(a × b)をマッピングしたもの