気温と湿度に対する消費電力の感応度 一般送配電事業者ごとの毎時電力消費量に着目して

蛭田有希,GAO Lu ,芦名秀一
2019.12.12

論文情報

気温と湿度に対する消費電力の感応度 一般送配電事業者ごとの毎時電力消費量に着目して

著者:蛭田有希,GAO Lu ,芦名秀一
年:2019
掲載誌:土木学会論文集G(環境), 75 (6), Ⅱ_17-Ⅱ_27

キーワード

electric power demand, climate-sensitivity, temperature, relative humidity, multivariate adaptive regression splines

要旨

電力需要の変動幅の拡大は、電力負荷率の低下による供給コストの増加だけでなく、化石燃料の消費の増大も招く。気候条件と時間単位の電力需要との関係を明らかにすることは、効率的な電力供給だけでなく、地球温暖化問題や市街地高温化問題に対する緩和策や適応策を検討するうえで重要である。
本研究では、気温と湿度の違いが毎時電力消費量の多寡に及ぼす影響を把握することを目的として、一般送配電事業者(10社)ごとに電力の気温感応度を示した。具体的には、人間活動の日内変動を表す指標や気象観測データに基づき消費電力量を推定する回帰モデルを、多変量適応型回帰スプライン(MARS:multivariate adaptive regression splines)によって構築した。そして、構築した回帰モデルを用いてシミュレーションを行うことで、着目する要因以外の影響をコントロールたうえで、時間帯ごと、湿度ごとに気温感応度関数を示した。さらに、得られた気温感応度関数に基づいて、消費電力が下降から上昇に転ずるバランス・ポイントにおける気温(BPT)を把握した。
結果、構築した回帰モデルは、あてはまりと汎化性の両観点から精度が高いモデルであると判断され、本研究で採用した手法は気温感応度を把握するうえで有用だと考えられた。そして、1日のうち概ね2種類(日中と深夜)の気温感応度関数が特定されること、また、沖縄以外の地域では夏の日中に湿度の影響が大きく、湿度が高い場合にはより低い気温でも冷却需要による消費電力が上昇に転じ、気温1℃あたりの消費電力増加率も高くなることが明らかとなった。

図-1 構築したモデルの評価(観測値と推定値との比較)
図-2 時間帯ごとのシミュレーションによる気温感応度
図-3 湿度の違いによる気温感応度の変化 (日中を代表して11時の条件で推定)