メッシュ周辺人口集積度に基づいた乗用車CO2排出量の推計

陳鶴, 有賀敏典, 松橋啓介
2019.1.16

論文情報

メッシュ周辺人口集積度に基づいた乗用車CO2排出量の推計

著者:陳鶴,有賀敏典,松橋啓介
発表年:2018
掲載雑誌:土木学会論文集D3, 74(5)

概要

立地適正化において低炭素化を検討する際に、居住人口誘導だけではなく、都市機能誘導の効果も期待されている。そのため、周辺メッシュとの関係などを表現できるような改善が課題である。本研究では、3次メッシュ人口規模とメッシュ周辺人口集積度を考慮した地域タイプに基づき、一人あたり乗用車CO2排出量を推計する方法を検討した。まず、人口の少ない地域と人口集中地域の排出量特徴を把握するため、人口規模は全部で7分類にし、メッシュ人口規模別の一人当たり乗用車CO2排出量を表-1に示す(方法1)。また、周辺の人口集積度を考慮したメッシュ地域タイプに基づき、一人当たり乗用車CO2排出量の推計を行った。メッシュの範囲のイメージを図-1に示す。メッシュ地域タイプの分類のフローチャートを図-2に示す。メッシュ地域タイプ別一人当たり乗用車CO2排出量を推計した結果を表-2に示す(方法2)。なお、両方法で求めたパラメータを用いて、2010年の関東における一人当たり乗用車CO2排出量のメッシュ分布図を描き、図-3に示した。結果として、人口規模が大きいほど、また、人口周辺集積度が高いほど、一人当たりの乗用車CO2排出量が少なくなることを確認した。メッシュ人口規模を7分類と細かくすることによって、人口規模5千人以上になる際に、排出量が大幅に減少し、人口集中地域における乗用車CO2排出量の抑制効果が顕著であることを定量的に示した。また、周辺人口を考慮した分類を行うことで、5✕5メッシュの範囲内の人口が500人に満たないほど人口が少ない地域において、乗用車CO2排出量が大きくなることを示した。過疎地域に住んでいる人口の割合は高くないものの、今後の人口減少によりそのような地域の増加が見込まれているため、小さな拠点などの地域対策の重要性がより高くなる可能性があると考えられる。

表-1 2010年メッシュ人口規模別一人当たり乗用車CO2排出量(方法1)
メッシュ人口規模による乗用車CO2排出量を回帰分析により算出する。市町村別一人当たり乗用車CO2排出量を被説明変数、メッシュ人口規模別人口を説明変数とする。その結果、人口規模が大きいほど、一人当たりの乗用車CO2排出量は少なくなっていることがわかった。一人当たり乗用車CO2排出量は人口規模5千人以上になると約40%少ない。
図-1 メッシュ範囲のイメージ図
i×iの四方のメッシュ範囲に含まれる人口をメッシュ周辺人口集積度とする。範囲が近いほど、中心メッシュ内の施設へのアクセスがしやすく、利用しやすくなり、範囲が広いほど、施設への移動距離が長くなると考えられる。メッシュ地域タイプの分類は、近い範囲から段階的に広げていく。全国都市交通特性調査の結果による交通手段別平均移動距離を参考にして、3×3の四方は徒歩の移動範囲(半径1.5km距離)と考えられる。5×5と7×7の四方は自転車の移動範囲(半径4km距離)と考えた。距離が長くなると、自動車の利用が増えていくと考えられる。
図-2 メッシュ地域タイプの分類手順
人口規模とサービス施設の立地の関係及びi×iの範囲を参考として、分類ごとのメッシュ数シェアや人口シェアのバランス及び一人当たり乗用車CO2排出量の説明力を考慮した試行錯誤の上で分類した。
表-2 2010年メッシュ地域タイプ別一人当たり乗用車CO2排出量(方法2)
メッシュ地域タイプ別乗用車CO2排出量を回帰分析により算出する。市町村別一人当たり乗用車CO2排出量を被説明変数、メッシュ人口規模別人口を説明変数とする。その結果、メッシュ周辺人口集積度が高いほど、一人当たりの乗用車CO2排出量が少ないことがわかる。中都市(5×5範囲以内に5万人)と中都市中心(3×3範囲以内に5万人)では約30%異なっている。また、過疎地域と集落(5×5範囲以内に5百人)で約60%の差がある。過疎地域に住んでいる人口の割合は高くないものの、今後の人口減少によりそのような地域の増加が見込まれているため、小さな拠点などの地域対策の重要性がより高くなる可能性があると考えられる。
図-3 一人あたり乗用車CO2排出量の推測
立地適正化計画に向けて、居住人口誘導を検討する際には、個別のメッシュを注目したメッシュ規模に基づいた方法(方法1)が有効であるが、都市機能誘導を検討する際には、周辺の状況を把握できるメッシュ地域タイプに基づいた方法(方法2)が参考になると考えられる。方法1では、個別のメッシュ人口を用いて算出しているため、居住地としての特性を踏まえた一人当たり乗用車CO2排出量の分布が点状になっており、隣接メッシュとの排出量の差が大きいケースが多く見られる。方法2では、周辺の人口集積を用いて算出しているため、集積の中心としての特性を踏まえた一人当たり乗用車CO2排出量の分布が面的になっており、都市中心から郊外にかけて増加する傾向を示している。