地域特性を考慮した収集運搬による費用・CO2排出量推計のための修正グリッドシティモデルの開発−愛知県を対象としたケーススタディ−

牧誠也,大西悟,藤井実,後藤尚弘,五味馨
2020.1.30

論文情報

 地域特性を考慮した収集運搬による費用・CO2排出量推計のための修正グリッドシティモデルの開発-愛知県を対象としたケーススタディ-

著者: 牧誠也,大西悟,藤井実,後藤尚弘,五味馨
年:2019
掲載誌:廃棄物資源循環学会論文誌, 30, 153-165

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キーワード

廃棄物収集運搬、グリッドシティモデル、線形計画法、地域特性、愛知県

要旨

広域処理計画の支援や発電・熱利用等のエネルギー回収の要望から、収集運搬を含む総合評価システムの構築が求められています。しかし、収集運搬評価に用いられてきた従来のグリッドシティモデルは、式1のように、収集範囲となる地域を正方形と仮定した輸送距離を計算するために、面積の根を計算に含み非線形の計算となるため、計算量が分割単位に従って増加し、収集範囲内の運搬距離を一定と仮定するため、運搬の最適化することができないという問題点がありました。

このため、多数の収集範囲を想定し、組み合わせの違いによる収集運搬の評価検討を必要とする広域の廃棄物処理システムの評価計算を行うには、計算量及び前提において適していません。また、収集ステーション数など公式の統計に存在しないパラメータを用いるなど一般的な廃棄物処理システムの評価には不適切と考えられる特性を持ちます。そのため、広域に適用可能で簡易に計算可能なグリッドシティモデルに代わる収集運搬モデルを構築する必要性がありました。
本研究では、図1の計算フローに従い、従来モデルの修正モデルを開発し、そのケーススタディとして愛知県を対象地とし、運搬は最適化問題、収集は重回帰モデルを用いて、公開の統計情報によって収集運搬による費用及び二酸化炭素排出量を計算・評価可能な収集運搬モデルの構築を行いました。
運搬による費用・二酸化炭素排出量の推計では、どの処理場に輸送されているかは統計情報からは確認できないため、効率的な廃棄物の運搬がなされていると仮定しました。各地点から発生した廃棄物は以下の式2~5に従い、現在の処理量を施設の処理可能量とした制約をおき、線形計画法によって輸送に伴うトンキロを最小化するモデルを作成しました。

収集負荷では、統計を用いて計算ができる簡易的なモデルとするため、「収集回数」「ステーション数」の代替変数として「世帯数 」、地域特性を見るために「路要素 」を変数として用い、重回帰分析をすることで収集負荷を計算できるモデルの構築を行いました。
式6は上記の内容をもとに、収集負荷を恒等式で表したもので、式7は本研究での対象地における具体的な重回帰分析の設定になります。

式7の恒等式を統計的に解くことでえられる特性係数 、 を分析することで地域特性について比較可能なモデルとして整備を行いました。
上記モデルを開発し、愛知県において適応した結果、最適化問題を解くことで各施設の収集範囲を推計でき、複数の労働時間給を用いた世帯数及び道路要素による重回帰分析を行い、図2のように非委託以外の労働時間給区分では高いR2値を持つ再現性の高い回帰モデルを開発でき、線形式での収集運搬影響評価モデルを開発することができました。また、本研究のモデルによって推計された二酸化炭素排出量は7.65×104~2.96×105 t-CO2/yearとなり、既往の原単位法と同程度であることから、二酸化炭素排出量についても適切なモデルが作成でき、排出原因を詳細に推定可能なモデルとなったと考えられます。ただし、労働時間給の設定によっては実現不可能なほど収集時間が膨大になる場合があったため、適切な計算を行うためには実態としての労働時間給を把握することが必要となると考えられます。

図1 修正グリッドシティモデルの作成フロー
図2 各労働時間給区分における収集時間と世帯数との関係