論文情報
Implications of declining household economies of scale on electricity consumption and sustainability in China(中国における世帯規模の減少による電力需要と持続可能性への影響)
著者:Wenchao Wu,金森有子,Runsen Zhang,Qian Zhou,高橋潔,増井利彦
掲載誌:Ecological Economics, 184, 106981
キーワード
世帯規模の経済性,パネルデータ分析,電力消費,持続可能性への影響,中国
概要
過去数十年にわたって、中国における平均的な世帯規模は減少してきた。今後も、減少を続けていく可能性が高い。そのことから、世帯規模の経済性の損失が懸念されている。中国では電力生産に伴う生態系・環境への影響の強度が大きいこと、さらに今後も電力消費の急増が予想されることなどから、世帯規模の経済性の損失の影響は、電力需要と持続可能性について特に深刻に表れることが懸念される。本研究では、中国全土を対象地域とした2010年~2016年の世帯調査パネルデータを使用して、電力消費における世帯規模の経済性の有意な影響を示した。具体的には、世帯人数が1人減ると、電力消費量が17.0〜23.6%増加することが示された。さらに、中国における生態学的・環境的な影響を推計した。その結果、世帯規模が減少すると、二酸化炭素排出量、取水量、煙灰排出量、二酸化硫黄排出量、窒素酸化物排出量、および産業廃水排出量は増加することが明らかになった。

たとえば、2030年から2035年にかけて世帯規模を0.5人削減(平均世帯規模が現状の約3人から2.5人に減少)すると、対2015年比で、中国全体の二酸化炭素排出量が0.5%増加し、取水量が0.3%増加する可能性がある。増加する二酸化炭素排出量は、ポルトガルの一国の排出量とほぼ匹敵する。この研究は、世帯規模の経済性をエネルギー需要予測と持続可能性評価に組み込む重要性を示唆するものである。また、世帯規模の縮小が世界的に起こっているため、中国のみならず世界的にも、よりクリーンなエネルギーへの転換が必要であるといえる。
