家庭CO2統計に基づく全国10地方別の排出要因分析と市町村別世帯あたり排出量の推計
— 全国試験調査結果を用いて—

石河正寛, 松橋啓介, 金森有子, 有賀敏典
2018.12.3

論文情報

家庭CO2統計に基づく全国10地方別の排出要因分析と市町村別世帯あたり排出量の推計— 全国試験調査結果を用いて—

著者:石河正寛,松橋啓介,金森有子,有賀敏典
発表年:2018
掲載雑誌:土木学会論文集G, 74(6), Ⅱ_193-Ⅱ_201

概要

家庭部門のCO2排出量を効果的に削減するためには、居住地の気象条件や世帯規模と建て方の構成などに応じて適切な対策を講じることが重要です。従来、我が国では家庭部門のCO2排出実態やエネルギー消費実態等の詳細な基礎データの把握が不十分であったため、市町村ごとの地域特性の違いを踏まえた対策の検討が進まない状況が続いていました。しかし、平成29年4月から開始された政府の一般統計調査「家庭部門のCO2排出実態統計調査」の結果が活用されることで、各市町村の地域特性に応じた家庭部門CO2排出量の削減対策の取組みが進むことが期待されます。ただし、「家庭部門のCO2排出実態統計調査」の結果は、地方10区分別に集計された形で一般には公表されることから、地域区分が粗い、気候区分との対応がとれない、といった課題をクリアする必要があると考えられます。そこでこの論文では、「家庭部門のCO2排出実態統計調査」の全国試験調査の個票データを用いて重回帰分析によるパラメータ推定を行うとともに、推定したパラメータを用いた市町村別の世帯あたりCO2排出量の推計を行うことを目的としました。重回帰分析に際しては、気候区分を考慮するための要素として暖房デグリーデーを加えて分析しました。
パラメータ推計では全国モデルと地方別モデルの2つを検討し、全国モデルに対して地方別モデルは重相関係数で1-3ポイント程度の精度改善が図られること、北海道・東北・関東甲信・九州では地方内での暖房デグリーデー差がCO2排出に有意な差を生じさせることを明らかにしました(表-1)。地方別モデルを用いて市町村別の世帯あたりCO2排出量を推計した結果、東北・関東甲信・北陸・近畿における四分位偏差が0.4以上であり、地方内における市町村間の排出原単位の差が特に大きい可能性を示しました(図-1)。

表-1 パラメータ推計結果
図-1 地方別モデルを用いて推計した市町村別の世帯あたりCO2排出量