Cost of preventing workplace heat-related illness through worker breaks and the benefit of climate-change mitigation.

Jun’ya Takakura, Shinichiro Fujimori, Kiyoshi Takahashi, Yasuaki Hijioka, Tomoko Hasegawa, Yasushi Honda, and Toshihiko Masui
2017.7.3

論文情報

 Cost of preventing workplace heat-related illness through worker breaks and the benefit of climate-change mitigation.

著者:Jun’ya Takakura, Shinichiro Fujimori, Kiyoshi Takahashi, Yasuaki Hijioka, Tomoko Hasegawa, Yasushi Honda, and Toshihiko Masui
発表年:2017
掲載雑誌:Environmental Research Letters, 12(6) 064010 2017

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概要

 気候変動によって,労働者はより多くの暑熱ストレスに曝されることが予想されます。熱中症のリスクを低減するために、作業中に休憩を取ることが推奨されています。しかし、休憩を取ることで作業可能な時間が減り、労働生産性が低下します。本研究では、熱中症予防のために休憩を取ることによる経済的なコストを、幅広い将来シナリオの下で推計し比較しました。WBGT(暑さ指数)と呼ばれる暑熱ストレスの指標と,推奨される休憩時間の値をもとに将来の労働時間の減少を予測し、経済モデルを用いてGDP損失を推計しました。温室効果ガスの排出増加が続くというシナリオの下では、経済的コストは2100年の時点で、世界全体のGDPの2.6~4.0%と推計されました。一方で、パリ協定で掲げられている2℃目標を達成できた場合には、0.5%以下に収まると推計されました。この差は2℃目標を達成することの便益に相当しますが、2℃目標を達成するために必要とされている費用とも比較可能な値です。2℃目標の達成や、社会経済状態の改善によるエアコンの普及などは、特に開発途上国での損失を減少させる効果がありますが、屋外の労働は影響を受けることが予想されます。気候変動の緩和策に加えて、労働時間帯を涼しい時間帯にずらすといった気候変動に対する適応策も今後重要になってくると考えられます。

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図1:推計された経済的なコスト(気候変動が全く進まないと仮定した場合と比較したGDPの変化率)。
SSP1は経済発展が急速に進むと仮定した場合、SSP2は経済発展が現在のペースで進むと仮定した場合、SSP3は経済発展があまり進まないと仮定した場合。RCPの後ろに付いている数字が大きいほど、温暖化が進む。RCP2.6が2℃目標に対応する。色付きの領域と実線は5つの異なる気候モデルによる予測の幅と中央値を表す。