世界のガス排出のダウンスケールと気候モデル実験から得られる含意

藤森真一郎, 阿部学, 木下嗣基, 長谷川知子, 川瀬宏明, 櫛田和秀, 増井利彦, 岡和孝, 塩竃秀夫, 高橋潔, 建部洋晶, 吉川実
2017.1.12

論文情報

 世界のガス排出のダウンスケールと気候モデル実験から得られる含意

著者:藤森真一郎1, 阿部学2, 木下嗣基3, 長谷川知子1, 川瀬宏明4, 櫛田和秀5, 増井利彦1, 岡和孝5, 塩竃秀夫6, 高橋潔1, 建部洋晶2, 吉川実5

1. 国立環境研究所・社会環境システム研究センター
2. 海洋研究開発機構・統合的気候変動予測研究分野
3. 茨城大学農学部
4. 気象研究所
5. みずほ情報総研株式会社 環境・資源エネルギー部
6. 国立環境研究所・地球環境研究センター

発表年:2017
雑誌名:PLOSONE

論文へのリンク(英文のみ)

概要

将来の気候の予測には、気候モデル(CM)が用いられるが、人間活動由来の温室効果ガスと大気汚染物質は統合評価モデル(IAM)で作成される将来シナリオが使用されている。ただし、IAMとCMでは空間分解能が異なる。IAMは通常、世界を10〜30の集約的な地域に区分する一方で、CMはグリッドベースの空間分解能を必要する。従って、IAMによって作成される排出量をCMに入力するには、IAMからの排出データを詳細なグリッドへ割り当てる作業が必要となる(この作業をダウンスケールと呼ぶ)。本研究では、ダウンスケール手法の違いが気温や降水などの気候変動に大きく影響するかどうかを調べた。AIM/CGEと呼ばれるIAMモデルから得られた地域集約な硫黄排出シナリオを用いて、2つの極端なダウンスケーリング法をテストした。ダウンスケールされた排出量は、MIROCと呼ばれる気候モデルに入力された。有意検定を適用して2つの方法の気温変化と降水量の予測が大きく異なるかどうかを調査し、両者の間に有意差がないことを確認し、これらの2つのダウンスケーリング手法に基づく気候シミュレーションの違いの明確な証拠はなかった。本研究の成果は異なるモデルコミュニティ間での情報の交換を促進する布石となる可能性があり、今後の研究の発展に寄与するものである。

二つの異なるダウンスケール手法を用いた排出量分布の違い(上は0.5度グリッド、下はMIRCOに入力されたT42(約 2.8°×約 2.8°))