Genuine Savings and Sustainability with Resource Diffusion
(資本が越境する状況でのジェニュイン・セイビングと持続可能性)

山口 臨太郎
2021.9.17

論文情報

Genuine Savings and Sustainability with Resource Diffusion
(資本が越境する状況でのジェニュイン・セイビングと持続可能性)

著者:山口 臨太郎
年: 2021
掲載誌:Environmental and Resource Economics (2021)


キーワード

ジェニュイン・セイビング、包括的富会計、持続可能な発展、空間的拡散

概要

一国の自然資本が減ることは、将来世代が使えるリソースが減るという意味で、持続可能でないと考えることができます。このように、「いま存在する資本の価値」を追跡するのが、自然資本を含めた富会計の役割です。

では、地下の石油資源のような自然資本が国境を越えて拡散する状況は、どう考えればよいでしょうか。この状況では、「いま存在する資本の価値」だけでは持続可能性を正しく表せません。これから将来にかけて流出・流入すると予想される自然資本の価値を、引いたり足したりして調整する必要があります。

本研究では、近年の空間動学最適化の研究を使い、このことを示しました。さらに、各国が自国の利益だけを考えて行動する場合と、世界全体の利益を考えて行動する場合とで、調整する価値が異なることを示しました。

資本が越境する状況で一国の持続可能性の指標を構築するには、自然資本の将来の空間的な拡散率、時間割引率、そして各国がどのような資源管理を行うかという予想を踏まえる必要があることがわかりました。

国連、世界銀行、国連環境計画、カナダ政府などで自然資本の価値を含めた富会計の整備が進められていますが、「いま存在する資本の価値」だけではなく、将来的に越境すると予想される自然資本を調整しないと、正しく持続可能性を表せないかもしれません。こうした点に注意して、自然資本・富会計をさらに改良していく必要があります。