論文情報
著者: 金 炅敏, 松橋 啓介, 石河 正寛, 有賀 敏典
年:2020
掲載誌:都市計画論文集、55巻3号、p.1121-1127
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キーワード
人口変動要因, ベイズ型APC分析, 年齢効果, 時代効果, コーホート
要旨
人口構成の現状把握や将来人口の推計は、都市計画において量的な検討をする上で重要です。人口分析や推計には、特定の生まれ年で区分した人口の集団であるコーホート(世代)の概念が主に用いられていました。コーホートの構成要素は、加齢やライフステージに関わる「年齢効果」、社会全体の変化に関わる「時代効果」、団塊の世代やミレニアル世代のように他の世代と区別できる「コーホート効果」の3つに分解することができます。
この論文では、2000年から2015年までの国勢調査の第4次メッシュ(およそ500m四方)を用いて、全国人口構成に対する個々のメッシュ人口構成を対象とし、「ベイズ型APC分析」(※注1)を適用することで、人口変動に対する効果として年齢・時代・コーホートの3つの要因のどれが大きく影響しているか、特に年齢効果について、どの年齢層が影響しているかについて千葉県柏市と茨城県つくば市を対象に分析しました。
100人以上のメッシュで行った分析の結果より、柏市では約21%、つくば市では約41%のメッシュにおいて、「コーホート効果」よりも、「年齢効果」や「時代効果」の方が人口変動の要因として大きいことが分かりました(図1)。
また、年齢効果の最大区間を推定することによって、当該メッシュの人口構成比が全国に対して、どの年齢層で多いかを把握することができます。これは、現在や将来の生活を支援する施設の整備などに生かすことができると考えられます(図2)。
※注1古典的なAPC分析では、「時代」=「年齢」+「コーホート」という線形従属になる「識別問題」のため、3つの要因を分離することが困難でした。分析方法が発展し、ベイズ型APC分析を用いることで要因の効果を分離して相対的に評価することができるようになりました。