都道府県別人口変動に及ぼす年齢・時代・コーホート効果の分析

金炅敏、松橋啓介、石河正寛、有賀敏典、崔文竹
2022.4.21

論文情報

都道府県別人口変動に及ぼす年齢・時代・コーホート効果の分析

著者:金 炅敏、松橋啓介、石河正寛、有賀敏典、崔文竹

:     2021
掲載誌:都市計画論文集2021年56巻3号 p. 1282-1288


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本論文が、日本都市計画学会 2021 間優秀論文賞を受賞しました

キーワード

都道府県、ベイズ型APC分析、年齢効果、時代効果、コーホート

要旨

1980年から2015年までの8時点の国勢調査の都道府県別5歳階級別人口について、「ベイズ型APC分析」を適用し、都道府県の特徴を類型化しました。41道府県ではコーホート効果が最も大きかった一方で、6都府県ではコーホート効果よりも年齢効果の方が大きいという結果が得られました。
 
就業や就学が影響する年齢効果を「年少型、老年型、就業型」、地域的な経済状況の特徴を反映する時代効果を「増加型、減少型、凸型、凹型」、生まれ年代を反映するコーホート効果を「旧世代型、新世代型」に分類し、それぞれの特徴を示しました。これにより、この期間の47都道府県の人口変化の特徴を17種類に分類できることが分かりました。

表-1は都道府県別効果の大きさおよび効果別パターンを示すものです。効果別パターンの組み合わせを見ると、最も多い組み合わせは「年少型+旧世代型」で13県が該当します。次に多い組み合わせは「旧世代型のみ」の7県と、「老年型+旧世代型」の5県です。以上の25県は、地方圏に共通する人口減少と高齢化の課題に直面してきたと考えられます。一方、県内における進学先および就職先の確保が効果的な対策となりうる県や、出身地へ戻ってくる高齢層に対する介護施設の拡充などが求められる県など、異なる特徴を有していることが分かります。

国土のグランドデザイン2050における三大都市圏に着目すると、埼玉、千葉、神奈川、愛知、京都、大阪では、就業型、増加型、凹型、新世代型の類型に1つ以上あてはまります。一方、三重は「老年型+旧世代型」であり、大都市圏にありながら長野に類似しています。このように大都市圏の中でも都府県ごとに異なる特徴がみられます。また、滋賀は大都市圏隣接県ですが、大都市圏に近い特徴がみられます。

表1 都道府県別効果の大きさおよび効果別パターン

今後、2020年度の国勢調査の結果を加えることで、最新のトレンドを反映した要因分析が可能になると考えられます。また、市区町村単位のAPC分析を行い、大都市部やその周辺の地域、そして農村部や過疎化が進んでいる市区町村の特徴をより空間詳細に把握することも今後の課題です。