論文情報
著者 : 金炅敏、松橋啓介、石河正寛、有賀敏典
年 : 2021年
掲載誌: 土木学会論文集G(環境) 2021 年 77 巻 6 号 p. II_227-II_234
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キーワード
運転者数、運転免許保有者数、階層ベイズ型APC分析、将来推計
要旨
1995年から2015年の5時点間の性別5歳階級別の運転免許保有者数と平日運転者数の推移を対象にベイズ型APC分析を行い、免許保有者数および運転者数の変化の要因を、年齢、時代、コーホート効果に分けて評価するとともに、2020年から2050年までの将来推計と高齢者の免許返納と運転取りやめの考察を行いました。その結果、男性の新しい世代の免許離れと運転離れが進み、高齢女性の免許保有と運転の増加が進む傾向が分かりました。2015年に比較して2050年の女性の免許保有者数と運転者数は横ばいですが、男性の運転者数は半減することが明らかになりました。(図-1、図-2)


運転者数変化率と生残率の差分を、死亡によらない運転取りやめ率とし、免許保有者数変化率と生残率の差分を死亡によらない免許返納率とします(表-1)。2010→2015年と2045→2050年免許返納率をみると、男女共に70-74歳→75-79歳と75-79歳→80-84歳でも大幅に低下します。免許保有者と免許保有率の高齢化が著しく進行しているため、免許返納のタイミングも後ろ倒しになる推計結果が反映していると考えられます。次に、2010→2015年と2045→2050年の運転取りやめ率をみると、男性の70-74歳→75-79歳の運転取りやめ率はやや上がりますが、75-79歳→80-84歳ではわずかに下がります。女性の70-74歳→75-79歳の運転取りやめ率は、やや下がりますが、75-79歳→80-84歳では大きく下がります。高齢女性の運転者数が急速に増加しつつあるため、運転取りやめのペースが鈍化する傾向が反映していることが考えられます。 一方で、免許返納率に比較して運転取りやめ率の予測区間には非常に大きな幅があり、運転取りやめ率が男女共に2010→2015年より大きく上がる可能性もあります。その場合、免許返納によらない運転取りやめを促す対策がより重要になることが示唆されます。
