概要
福島県三島町に新しくできた単身者用住宅について住民説明会と住宅内覧会が行われました。NIES災害環境創生研究プログラム(社会センター、福島支部が参画)では、三島町の協力のもとで住宅のエネルギー利用状況をモニタリング・分析するシステム等を導入しました。その様子は多くのメディアにもとりあげられました。
取り組みの背景
国立環境研究所では福島支部が中心となって、東日本大震災の被災地における地域コミュニティの絆の維持・再生や、さらなる地域活性化に向けた復興支援のための研究を進めています。その一環として、福島県新地町にて、情報通信技術(ICT, Information and Communication Technology)を活用した、地域情報システム「くらしアシストシステム」の研究開発と社会実証実験を行ってきました。くらしアシストシステム導入の目的は、環境に配慮した地域におけるエネルギー利用の効率化や省エネルギー行動支援、社会コミュニティ活動支援、地域防災やまちづくりに関する情報発信などです。
今回対象となる三島町が位置する福島県奥会津地域では、平成23年7月の新潟・福島豪雨により甚大な被害を受け、現在もJR只見線が一部運休しています。三島町では少子高齢化が急速に進む中、地域資源を活用したエネルギーシステムの構築をはじめとして、持続可能な社会の構築に向けた様々な取り組みが進んでいます。その一環として、定住促進を目的とした単身者向け町営住宅が平成29年3月に完成予定です。福島支部は三島町の取組を支援するために研究依頼を申し込み、新築される町営住宅に対してホームエネルギーマネジメントシステム(HEMS, Home Energy Management System)*1を設置し、既往の「くらしアシストシステム」と連携した研究を開始することとしました。
具体的には、今回設置予定のHEMS、「くらしアシストシステム」、そして住宅に設置済の「スマートメーター」*2とを接続することで、住宅における電力消費をリアルタイムに計測し、電力使用状況の診断や専門的な知見に基づいた省エネ情報の提供、環境に配慮した行動を促す研究等を行うことを予定しています。入居者の「くらしアシストシステム」へのアクセスは、個人所有のパソコンやスマートフォンなどを通じて行う予定です。さらに、研究活動だけでなく、町のホームページの自動的な読み取りや、地域情報の閲覧や発信、国立環境研究所が行う各種調査研究のためのアンケートを「くらしアシストシステム」を使って行う計画です。なお、後者の調査研究は、新築住宅入居者のみを対象とせず、三島町内外からも利用可能とする予定です。
*1)HEMS 家庭内で多くのエネルギーを消費するエアコンや給湯器を中心に、照明や情報家電まで含め、エネルギー消費量を可視化しながら積極的な制御を行うことで、省エネやピークカット(電力需要が集中する時間帯の供給電力量を低く抑えること)の効果を狙う家庭向けエネルギー管理システム
*2)スマートメーター 消費電力をデジタルに記録し通信機能も持つ次世代電力量計。各電力会社が導入を始めており、2024年度末までに国内全世帯に設置される予定
なぜ三島?
中山間地域での地域エネルギーと過疎対策について考えるため。奥会津地域での展開を考えた際、エネルギーに配慮している三島の単身者向け住宅(定住促進を目的としている)は好例でした。中山間地域での家庭のエネルギー消費データはこれまであまり測定されていないので、この地域に地域エネルギーの導入を検討する際に科学的基礎データを与えることができます。また三島町を含めた奥会津、会津地域では森林資源が豊かな場所であり森林バイオマスの利活用が検討されています。測定されたデータは将来のバイオマスボイラーやバイオマス発電の検討に貢献できます。
この取り組みの新しい点とは?
エネルギーの見える化だけでは珍しくありません。しかし、スマートメーターとHEMSの接続、それによって単なる見える化に留まらず、家庭でのエネルギー使用を細かく分析できるうえに、それをユーザーにフィードバックできます。将来的には家電制御なども視野に入れています。
テレビ放送・メディア掲載
<テレビ> ●TUFテレビユー福島、FTV福島テレビに取り上げていただきました。 <新聞> ●福島民有(3月9日掲載)、福島民報(3月16日掲載)、朝日新聞福島面(3月16日掲載)、福島建設工業新聞(3月17日掲載)に取り上げていただきました。